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蒼い空の夜明け

《書いてる人》⇒夜明けの敵

「蒼い空に浮かぶキュトス(仮)」
71の大地と10の星が浮かぶ、果てなく広がる蒼穹世界。この日記は、その世界の創世から終末までの「人と神々の物語」についての設定が集まる場です。(最近は停滞しています)

しばらくは「星見の塔トーナメント」についての紀述がメインになると思います。


2007-12-09

[][]星見の塔・三回戦前、控え室 はてなブックマーク - 星見の塔・三回戦前、控え室 - 蒼い空の夜明け

 三回戦開始以前。

 商人と騎士は、「呪いを軽減させる」と言っていた魔女が戻ってくるのを、何日も待っていた。

「……わたしの石を何日も借りやがって。ちゃんと返してくれるのかな……。っていうか、本当に呪いをなんとかしてくれるんだろうなー、ノシュトリのやつ」

 商人はベッドに横になりながらぼやいた。向かいの壁に隣接しているベッドには、騎士が黙って座っている。部屋のなかには二つのベッドと、大きめのタンスくらいしか家具はおいていない。基本的には殺風景な部屋だった。

 しかし、最近になって、少しずつ物が増えてきていることに、騎士はもちろん気づいていた。

「なあ」騎士は言った。「お前、このごろ塔の中から色々とくすねてるだろ?」

 いきなり質問されて、商人は明らかにうわずった声で「ハイ?」と答えた。

「そ、そんなことないよ? き、紀のせいじゃん?」

「くすねた包帯とか安っぽそうな剣を大会に出てる奴に売りつけてるとこも見たぞ。そんなことして、あとで魔女たちに復讐されても俺は知らないからな」騎士は言った。「俺まで共犯者にするのはやめてくれよ」

 実際のところ、商人は時間を持て余していたときに塔の中をうろつき、金になりそうな物をこっそりと収集していた。部屋にあるタンスの中や、商人がいつも肩から提げている鞄にはその収集品が入っている。

「そ、そんなー」商人が高い声で言った。「わたしのこと守ってよー」

「魔女の巣窟で盗みをはたらこうって女が、いちいち泣き言を言うな」騎士は言う。「だいたいだな、ノシュトリに見張られてるって可能性は考えないのか、お前」

「大丈夫」商人は言う。「ノシュトリだったら説得してみせる自信あるし、それに最近は、なんとなくだけど、ノシュトリが近くにいる感じってわかるようになってきた気がするし……」

「え、そうなの?」商人の言葉の最後のほうで、扉を開けて魔女が入ってきた。「キルシェ、いまの話って本当?」

「えっ!?」商人はいきなり普通に現れた魔女に驚いて、しどろもどろになって誤魔化し始めた。「いや、うそうそ、やだな、わたし何もしてないよ? いつもこの部屋で大人しくしてるよ?」

「……なんの話?」魔女は眉根を寄せた。

「え、ちがう?」

「お前が、ノシュトリが近くにいればわかる、って言ったことが本当かどうかって」

「あ、ああ」騎士の助言に、ようやく商人はうなずいて答える。「うん、まあ、なんとなくだけどね……勘みたいなものだから、当てにならないけど」

「そう……」魔女は複雑そうにうなずいて「こないだから、ちょっとずつこの石に力を移してたから、やっぱり力落ちてるんだなあ」と言った。

 魔女の手には、商人が以前まで身につけていた青い石があった。

「あ、わたしの石!」

「その石を身につけてれば、呪いの力が弱まるのか?」

「そう」魔女は言う。「一回戦でいい感じに呪いのスイッチが入って、二回戦ではリジェネレイトスライムに絶望の感情を増幅させられて、あなたの呪いもずいぶんと進行しているようだし、その状態で三回戦に挑めば悪化するのは目に見えてるからね。その呪いが体にたまらないように、この石に呪いが流れ込むようにしたから」

 こともなげに説明する魔女に、商人と騎士は驚いた。

「そんなことできるのか?」騎士が訊いた。

「わたしは気配を操る魔女ノシュトリ。このくらいできて当然」

「そんなことして、その石、壊れたりしないよね?」商人が訊いた。「それ、初めて自分のお金で買った装飾品だし、それなりの値打ちのする石だし、紀石の伝説ってわたし好きだし、ノシュトリに出会う前にもその石に助けられたことあったし……あの、だから無事な形で返ってくるとうれしいんだけど……」

「えっと、残念だけど」魔女はすまさそうに言った。「たぶん、壊れる」

 商人は声もなくその場にしずんだ。orz

CorundumCorundum2007/12/15 13:07この3人良い空気ですね。多分商人のおかげで……。
自分の中ではもうすっかり商人ストーリーみたいな感じになってます。商人ラブ。
次の回が気になります。

yoakeroyoakero2007/12/15 14:14騎士のキャラが弱すぎたんですよな。この頃は、自分でも商人ストーリーになってきてるという感がします(笑)
次回は敗戦後ですね。敗者復活戦がまだあるなら、その情報が出てから書こうと思っています。

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2007-12-05

[][]星見の塔・二回戦直後 はてなブックマーク - 星見の塔・二回戦直後 - 蒼い空の夜明け

 商人は気分がよかった。

 理由はもちろん、騎士が二回戦に勝利したからだ。リジェネレイトスライムが巻き起こす旋風をものともせず、強烈な斬撃を繰り出して勝利した騎士の姿に、観戦席にいた商人は飛び跳ねてよろこんだ。

 騎士の勝利をねぎらってやろうと思い、商人は観戦席を離れた。まっすぐ控え室には戻らずに、騎士が歩いているだろう通路へと小走りで駆けていく。

 二回戦を突破し、だんだんと頭の中に、優勝者に与えられる賞品の想像がふくらんでいく。ノシュトリは明確にはしなかったが、魔女の長ヘリステラが与える褒美なのだから、一人の人間の願いくらい簡単にかなうものなのではないか。

「国一つまるごと買えちゃったりしてね。ふふふふ」自然と頬が緩むのを抑えられない。「これもあの朴念仁のおかげだし、たまには優しく接してあげようかな」

 浮かれたステップで階段を降り、角を曲がったところで彼女は騎士の姿を発見した。

 しかし華々しく勝利した騎士は、剣を地面についたまま膝をついて俯き、まるで敗者のような姿をしていた。

「どうしたの!?」

 慌てて駆け寄る彼女だったが、顔をあげた騎士の目には殺気がみなぎっていて、思わず騎士にたどり着く前にその足を止めてしまう。

「……ああ」騎士は苦しそうにつぶやいた。「なんだ。お前か……」

「何があったの? 誰かに闇討ちでもされた!?」

 今度こそ、彼女は騎士のそばに近寄って聞いた。彼女の見たところ、酷い怪我はないようだが、苦しげな騎士の表情を見る限り、安心はまったくできなかった。

「とにかく、控え室まで行こう」商人はそう言って、姿の見えない魔女の名を呼んだ。

「……だから、なんで貴方たちは気配を消してる私のことを、そんな簡単に呼べるのさ」

 小言を言いながらも、騎士のすぐ近くの壁にもたれかかっていた魔女が姿を現した。

ノシュトリ。こいつを控え室に運ぶの手伝って。よくわかんないけど、すごく苦しそうなの」

「それは呪いよ」ノシュトリは言った。「貴方も知ってるでしょ。呪われた獣を倒した彼が、どんな呪いをその身に受けたか」

「じゃあ……」商人は言う。「こいつは、ここで戦い続ければそれだけ苦しむっていうの? 勝ち続けたとしても?」

ノシュトリ……」騎士がうめいた。「余計なこと言うな。まったく……」

「そうは言ってもね、このまま隠しとおせるものじゃないでしょう。それに、この子にこんなに睨まれちゃったらねえ……」

 そう言って、魔女は商人を見た。

ノシュトリ」彼女は言う。「こいつの呪いをなんとかして」

「それから三回戦に挑むっていうの? いっそ棄権するって選択肢は貴方たちにないの?」

「ないわ」彼女は断言した。「そんな中途半端なこと、わたしもこいつも許せない」

「……俺の意見を無視して話をすすめるな」膝をついたままの騎士が、苦しげに言った。「まあ、俺もこいつと同意見だけどな。戦いを降りる気はない」

 二人ににらまれる形となって、魔女はため息をついて、うなずいた。

「貴方たちには呆れるわ。いいわ、次の試合に出れるくらいには、なんとかしてあげようじゃない」

 魔女はそう言って、商人が首からさげていた青い石の首飾りに指を触れた。

「これ、紀石のレプリカでしょ。これを借りるわよ」

 商人は無言でうなずいた。

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2007-11-21

[][]星見の塔・二回戦直前控え室 はてなブックマーク - 星見の塔・二回戦直前控え室 - 蒼い空の夜明け

 二回戦直前の控え室。

 部屋の中を歩き回りながら、商人は「んー」と唸っていた。

「……変な奴ばっかりのトーナメントだと思ってたけど、次の対戦相手って、あれ、生物なの? ね、あれを連れてきたのって、アンタの姉さんなんでしょ?」

「うーん……。そりゃ、姉妹の誰かが連れてきたには違いないと思うけど、だからってわたしにあれのことを聞かれてもなあ」

 ノシュトリの返答に満足のいかない彼女は、なおも食い下がって質問しようとする。

「だいたいさ、もしあれが優勝したって、賞品なんてほしがるわけないと思うのよ。だってそうでしょ? あれがほしいものなんて食料くらいなもんでしょうよ。それだったら、もしあれが優勝したときはさ、もう一度最初から大会をやってさ、誰が優勝賞品をもらえるかってちゃんと決めようよ!」

「いや、無茶苦茶なこと言わないでよ。わたしがこの大会を直接運営してるわけじゃないんだし、そういうのはもっと上の姉さんたちに言ってくれないと」ノシュトリは言った。「……まあ、どのみち却下されるでしょうけどね」

「とにかくさあ、わたしは納得いかない!」商人は言う。「あれの名前だってさ、リジェネレイトスライムとかいってさ、それって生物としての名前でしょ? それって人間が『人間』って名前で参加してるのと同じことじゃん。そういうの一人としてカウントするのおかしくない? いいえ、おかしいわ。わたしにだってキルシェって名前があるのにさ、せめて名前のある奴を連れてこいって話でしょうよ!」

「……それは、わたしに対する批判なのかしら?」

「それとも、俺に対する皮肉か?」

 ノシュトリと騎士が続けて言って、彼女は自分が言っていたことの意味に気づいた。

「あ、や」慌てて彼女が言う。「別に悪くないと思うよ? うん、悪くない気がしてきた。名前がなくたって参加したっていいよね。名前なんてただの記号だよね? なんだい婆様め、キルシェなんて気障ったらしい名前つけやがって。わたしなんて名も無き商人で十分なのさっ」

 彼女はノシュトリと騎士から目をそらしながら、早口にまくしたてた。言ってることが無茶苦茶なことに変わりないが、ノシュトリと騎士はおかしくて笑ってしまった。

「まあ、だからさ」彼女は言う。「ノシュトリも、ノシュトリの姉さんも、グッジョブ! ってことで……どうよ?」

「く、くすすす……」ノシュトリがこみ上げてくる笑いを抑えながら言う。「そろそろ、二回戦が始まるみたいだから、準備したほうがいいんじゃない?」

「そうだな」騎士は口元に笑みを浮かべて答えた。「名前のないもの同士、いい勝負になりそうだ」

「もうっ」商人が言った。「二人とも、笑いすぎ!」

CorundumCorundum2007/11/24 00:13商人、可愛い、魅力的ですね!
出会いスト-リーも期待しております。

yoakeroyoakero2007/11/24 01:56商人はよく動いてくれるいいキャラです。
騎士がダウナーなので、その分アッパーになってるようです。そのせいで、行商人にしてはちょっと馬鹿っぽい…w

CorundumCorundum2007/11/24 02:01商談に入ったらビシッと決めるんですよね! きっと!w

yoakeroyoakero2007/11/24 02:22そうであることを願っていますw

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2007-11-11

[][]一回戦終了後 はてなブックマーク - 一回戦終了後 - 蒼い空の夜明け

「さっすが騎士さま! 圧勝じゃん!」

 控え室に戻ってすぐに、部屋中を飛び跳ねながら商人が言った。騎士は何も言わずにベッドの上に腰をおろし、足元を見つめて深く長い息を吐いた。

「この調子なら、本当に優勝できるんじゃないの!? 骸骨番長とか火の鳥とか剣とか猫とか、なんかいろいろいるけど、アンタだって十分、人間離れしてるんだからさ」

「…………そうだな」

「あ、そうだ。わたし、二回戦の相手が誰になるか確認してくるね。一回戦と違ってこれからは相手が誰なのか早めにわかるんだからさ、ちゃんと対策立てて試合に臨みたいもんね!」

 彼女はそう言って、騎士の返事も待たずに部屋を飛び出していった。

 控え室に一人残された騎士は、もう一度、先ほどよりも長く深い息を吐いた。

「……いるんだろ?」

 騎士は足元を見つめたまま、部屋のなかの誰かに言った。声はすぐに返ってきた。

「それが呪いの影響?」

 声とともに何もない空間からノシュトリが現れる。いや、騎士にはそう感じられただけで、ノシュトリは商人が部屋で飛び跳ねていたときから、そこにいたに違いない。

「そうだ」騎士が言った。「全力で戦った直後は、自分の意識が消えそうになる。力を使えば使うほど、俺は力に飲み込まれていく。……もともと、これは邪神の力なんだろう? それを人が使えば、これくらいのペナルティは当然か」

「むしろ貴方はラッキーだわ」ノシュトリが言う。「名前を失った時点で、普通の人間だったら自我まで消えて、力に振り回されるだけの存在になるわよ。貴方が戦った獣たちがそうだったでしょ? でも、貴方の場合、誇りがかろうじて自我を安定させてるみたいね」

「誇り、か」騎士は言った。「そうだな」

「それに」ノシュトリは続ける。「あの子の存在も大きいと思う。あの子がいなかったら、貴方はとっくに廃人になっていたわよ」

 それも正しいかもしれないな、と騎士は口に出さずに思った。自分は、彼女に二度助けられたのかもしれない。

 最初は命を。そして、誇りを。

「……はは。まったく、ずいぶんとでかい恩を背負ったものだ」

「…………」

 苦しそうに笑う騎士を、ノシュトリはじっと見つめていた。騎士にはその視線が、軽んじているようにも、哀れんでいるようにも見えなかった。まして、無感情の視線にはとても思えなかった。騎士はそれが気になった。

「どうした?」

「……なんでもない」

 その言葉の直後には、ノシュトリの姿はもう視認することもできなくなっていた。

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2007-11-10

[][]一回戦開始前 はてなブックマーク - 一回戦開始前 - 蒼い空の夜明け

 星見の塔内部にある、選手の控え室。騎士と商人と魔女は、一回戦を控えてこの部屋に集まっていた。

「頑張れ! アンタなら楽勝だ!」

 一人で熱くなっているのは商人だった。まだ成人して数年しか経っていないだろう彼女は、三人のなかでもっとも若い。希望と夢をあわせて語ることのできる若者であるからこそ、優勝者へあたえられる賞品にたいする期待もそのぶん大きい。なにしろ、彼女の夢は魔女の力でも借りない限りは達成できないかもしれないほどの大きなものだ。彼女にとって、ノシュトリからのトーナメントの誘いは渡りに船だったのだ。

 逆に、実際にこのトーナメントを戦い抜くことになる騎士のほうは、商人とちがって静かに戦いのときを待っていた。一回戦の相手が誰なのかは知らされていない。もしかしたら、部屋の隅に立っている魔女は知っているかもしれない。だが、騎士はそれを聞き出そうとはまったく考えない。誰が相手であれ関係ない。騎士たる自分は、ただ戦いのなかで全力を尽くすだけだ。相手のその後も、自分のその後も考える必要はない。守るべき君主のいない今の騎士にとって、戦いだけが自分の存在証明であり、生きることはすなわち戦闘だった。

 ――だが、と騎士は思う。

 一人、はしゃいでいる商人を見る。

 自分の命の恩人であり、自分に熱く夢を語ってみせ、そして守るべきものを自ら背負う決意をもった彼女。

 今の自分は、己の存在証明だけのために戦っているのではない。

 彼女の夢のために戦うと、騎士は剣に誓ったのだ。

 だから自分はここにいる。この怪しげな大会に参加したのも、すべてはそのためだ。

 彼女に対する恩義のためだけではない。彼女はすでに、騎士にとって大事な友人にも等しい存在だ。友人の夢を手伝うことに、抵抗やためらい、義理を感じる人間がどこにいよう?

 くすす、と部屋の隅に立つ魔女が笑う。「一回戦が始まったみたい。対戦表も公開されたけど、確認に行く?」

「いや、いい」騎士は言った。

「え、いいの?」商人が言った。

「ああ」騎士はそのまま黙って、戦いのときが訪れるのを静かに待った。

CorundumCorundum2007/11/11 00:03ここまで読みました。続きを期待してます。。

yoakeroyoakero2007/11/11 00:53ありがとうございます。あせらずゆっくり書いていこうと思ってます。お付き合い願えると幸いです。

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