2008-11-02(Sun)舞踏会十四日目
■ [断片]とある兄妹の会話
「ねぇニコラ」
「なんだいリトラ」
「ちょっと聞いてほしいんだけど」
「また何か思いついた?」
「うん」
「いいよ。聞かせて」
「ニコラは、この世界じゃない世界があるって信じてるよね」
「そうだね。だからこそあの研究をしているわけだし」
「だけど、もし……もしだよ?そんな《世界》なんてなかったら、どうするの?」
「うーん……」
「どうもしない、かな」
「どうもしない?」
「うん。また新しい研究を始めるだけ」
「残念じゃないの?」
「いいや。間違っている事は間違っている事でしかないからね」
「ふうん」
「それに、僕にとって研究は目的じゃないしね」
「どういうこと?」
「確かに、大学にいるのは研究をやりやすくするため。でも、研究なんて本当は手段でしかない」
「……」
「全てはね、リトラ。君の《境界症候群》を治すためだよ」
「……」
「君のためなら、僕はなんだってする」
「兄さん」
「僕は君のものだから」
「……兄さん」
「愛してるよ、リトラ」
(暗転、漆黒)
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