我がとうそう このページをアンテナに追加 RSSフィード

高島津諦のゆらぎの神話関連ペイジです
好き勝手やってますので、コメント・トラックバックお気軽にどうぞ

2008-05-27

舌の物語(6)

| 22:41 | 舌の物語(6) - 我がとうそう を含むブックマーク はてなブックマーク - 舌の物語(6) - 我がとうそう 舌の物語(6) - 我がとうそう のブックマークコメント

 家に着くと、もう夜九時を回っていました。

 私は両親からこんな時間まで遊んで心配をかけたことをしかられ、そしていきゅうさんの首を折ったことをしかられました。

「こんな時間まで何してるかと心配しとったら! 何考えてるの!」

「ごめんなさい」

「ごめんなさいじゃないわホントに! 一体どうしたかと散々心配させて!」

「……ごめんなさい」

 お説教の流れから、両親は、いきゅうさんの首を折ったのが私だということを周囲に隠すことにしたというのが分かりました。

「二度と馬鹿なことしたらいかんよ! 誰にも言わんのよ!」

 その言葉で、お説教は終わりました。しかしそれにほっとするより、私は何か大きな陰謀に巻き込まれたような不安にさいなまれていました。

 解放された私は、子供部屋に戻りました。私は不安を強くしながら、何とか宿題を片付けました。それから母が暖めなおしてくれた遅い夕ご飯を食べ、お風呂に入り、歯を磨きました。ベッドに入ったものの、一睡もできぬまま朝を迎えました。

 翌朝、母に起こされ、食卓で朝ごはんを食べ、何年かぶりに一人で学校に行きました。学校では先生の話をろくに聞かず、昨晩から今日のことについて考え続けていました。

 一体、どういうことなのでしょう。父母共に、妹の事に全く触れないのです。それこそが一大事であるはずなのに。いきゅうさんにだけ目がいき、転がっている妹には気付かなかった? まさか。もしそうだとしても、妹と一緒に遊びに行ったことは親も知っています。妹は何処に行ったのかと問われるはずです。けれど、一言たりともそんな事は言われませんでした。

 おかしなことはそれだけではありません。私の家は特にお金持ちというわけではなく、子供部屋は私と妹の共用でした。しかし部屋には、机も、ランドセルも、一人分――私の分しかありませんでした。親が、何かの理由で妹の家具や、生活用品や、その他もろもろを片付けてしまったのでしょうか。しかしそれらがあったはずの場所を調べても、床のへこみや色の違いのような痕跡すらありませんでした。そして、もちろんと言うべきでしょうか、夕食や朝食の席にも妹の姿はなく、妹のための準備というものもありませんでした。

 学校でも、毎日一緒に登校していた妹が一緒でないことについて、誰も何も言いませんでした。登校中に妹の友達ともすれ違った時も、普段なら「風邪?」などと声をかけてくるのに、何も聞かれませんでした。

 誰かにどういうことか尋ねめよう、という気にはなりませんでした。話題にしてしまったなら、私が妹を殺害したことに話が及ぶかもしれません。どういう理由かは分からないけれど、それを誤魔化せているようなら、少しでも先延ばしにしたい。子供の私は、まるで妹のように、そんな考えに甘えてしまいました。

 家に帰りベッドに横になると、二段ベッドだったものが一段になっていて、何年ぶりかで寝ながら天井が目に入ることに気づきました。そこに浮かんだ染みを見ながら何が起きたのか考えている内に、私は眠ってしまいました。

 夢の中で私は、暗闇の中にいました。それは重い仮面を被らせられているようでした。周りが見えず、食事も満足に取れません。いよいよ衰弱してきた時、外から強い衝撃があって仮面が割れました。開けた視界には、大きなケーキがあります。お腹の空いていた私はそれにむしゃぶりつきました。夢中で食べていると、私の前に誰かが立っていることに気づきました。よく見るとそれは私です。もう一人の私は大きな口を開け、私はそこに飲み込まれて目が覚めました。

トラックバック - http://flicker.g.hatena.ne.jp/runa_way/20080527