我がとうそう このページをアンテナに追加 RSSフィード

高島津諦のゆらぎの神話関連ペイジです
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2008-05-22

舌の物語(5)

| 19:52 | 舌の物語(5) - 我がとうそう を含むブックマーク はてなブックマーク - 舌の物語(5) - 我がとうそう 舌の物語(5) - 我がとうそう のブックマークコメント

 ……どれだけ時間が経ったでしょう。私は誰にも見咎められず、いきゅうさんに祈り続けていました。辺りはとうに暗くなっていました。

 変わったことは何一つ起きませんでした。妹の死体は首の折れたいきゅうさんの隣に相変わらず倒れ、その頭部からは血が赤黒く流れていました。

 それでも私はいきゅうさんへの祈りを唱え続けていました。それは現実からの逃げでもあったのでしょう。何の解決にもならなそうだということが薄々分かってきていても、その考えを頭から締め出すように祈り続けました。

 と、その時です。

「あんた!」

 背後から声がかけられました。母の声でした。

「こんなとこで何しとんの! 何時だと思っとんのよ!」

 私は息を呑みました。後ろを振り返ることもできず、体を硬くしてひざまづいたままでいました。

「返事くらいせんか!」

 声とともに、強い力で肩をつかまれました。振り向かされるとそこには怒った顔の母がいました。私はその表情がすぐに驚きに変わり、それが私の普通の生活の最後なのだろう、と思っていました。

「こんな時間まで何しとんの! もう誰もいないでない!」

 辺りを見回した母の顔が強張りました。その視線はいきゅうさんと、妹の転がっている方へと向けられていました。

 ――はい、おしまいー。もう終わりだね。人生終わり終わり。

 祈っている最中は消えていたもう一人の私が現れ、さばさばとした口調で呟きました。

「あんた……あんたがやったんか?」

 私は小さく頷きました。母は硬い表情で口を閉ざし、動揺していることが分かりました。

 そして、

「まず、うちへ帰るよ」

 それだけを言うと、私を引っ張るようにして、家へと向かいました。首の折れたいきゅうさんと、妹の死体を残して。

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