脚のないはてなガラス(BoB flicker side) このページをアンテナに追加

2008-01-15

[][紀述][物語]屠殺彦を巡る冒険(外伝)――幸せな結末 [紀述][物語]屠殺彦を巡る冒険(外伝)――幸せな結末 - 脚のないはてなガラス(BoB flicker side) を含むブックマーク はてなブックマーク - [紀述][物語]屠殺彦を巡る冒険(外伝)――幸せな結末 - 脚のないはてなガラス(BoB flicker side) [紀述][物語]屠殺彦を巡る冒険(外伝)――幸せな結末 - 脚のないはてなガラス(BoB flicker side) のブックマークコメント

ゆらぎ市で探偵をやるということは、物語作家であるというのと同じである。というのも、ゆらぎ市において一意的な現実は存在せず、観測者と記述者の相互干渉によって経ち現れるゆらいだ事象を暫定的に現実とみなさなければならないからである。だからこそ、探偵が必要だ、といえる。ありうる可能性の中からあるひとつの解釈を特権的に提示してみせることで、物語を完結させること。それは警察などという無粋な集団ではなく、探偵という特権的存在こそがなしうるものだからだ。

今回の事件は単純なものだった。ゆらぎ市外域の荒野に世捨て人として住んでいた男が突如失踪した事件。付近では屠殺彦が跋扈しているという【観測庁】の警報も出ていたことだし、どうせ外出中に屠殺彦に吸われたのだろう、というのが、警察の予断だった。もちろん私はこれに反対だった。そのような散文的な事実は特権者たる探偵に真実と定義されるにはふさわしいものではなかったからだ。

そこで私は被害者の自宅に脚を運んだ。地平線まで続く荒野の中心に、人を避けて建てられたその小屋は、世を捨てるに十分に孤独な環境だった。そこでわたしは違和感を覚えた。我々は、自身とともに他者とも接することで、複数の観察と記述に曝され、ゆらぎ続ける存在であることができる。【観測庁】のパラノイアたちがいくら現実を一意化しようと躍起になっても、それはゆるがしようのない前提だ。しかるにこの男はそれを峻拒し、自己省察のみをもって自らを一意化しようと試みているかのようであった。そこまでして守られなければならない「自己」とは一体なんであるのか――私は興味を抱いた。

私は小屋の中に入った。住むものを失った粗末な小屋の中は、すでに衰退と風化の兆しをしめしはじめていた。舞い散る埃を払い、窓を開け放ち、光と空気を取り込んで人心地付いた後、私は小屋の中を見渡した。必要最低限の生活を営むための道具が一そろいあるだけの殺風景な部屋。彼には生活をも捨てて自己省察に挑まねばならなかった根源的な理由がある。私はそう確信した。警察の凡庸な想像力では定義できず、故に観察できなかったそれの手掛かりを、私は探した。

そこで私はふたたび違和感を覚えた。このストイックで孤独な環境が、単に自己省察のために――自己のアイデンティティ一意化のためのみに用いられるはずがない。ゆらぎ市内でも、それなりのゆとりがあれば、全くひとりになって他者の観測と記述から逃れうる手段はあるからだ。木賃宿のひきこもり、下水道のホームレスにでもなれば、こんなところに小屋を建てるより簡単だ。では、なんのために?

突如直感がひらめいた。この家は、彼が自らのアイデンティティを一意化するための装置であるのみならず、彼がその視界全てを自己の観測=記述領域にするための装置――すなわち彼の願望あるいは妄想を具体化するための装置であったのではないか? わたしはその仮説の下に、自身の保有する概念【探偵】を展開した。普通ならば他者の観測と記述で打ち消され、狭い範囲で相対的にしか働かない【探偵】が、地平線の果てまで絶対的な効果を及ぼすのを感じ取った後、私はそれを起動した。

ひらり。何もない空間から私の前に、数枚の紙切れが現れ、落ちてきた。あるはずのない手掛かりを、私は観測によって具現化したのだ。私はそれを読んだ。

私は屠殺彦を愛している。あのシンプルで強靭な佇まい、何でも吸う貪婪さ、ただ「吸う」ことのみを求める、雑念のない確固たる主体性。それらは屠殺彦が生命として完成された存在であり、我々人間と対極的な存在であることの証だ。我々は無駄に複雑で脆く、生命力に欠け、意識などという不完全で矛盾したものにより世界を記述し書き換え続けなければ自らの存在すらも危ういし、それゆえにゆらぎ続けている。どちらが優れているか、どちらが美しいか、どちらがより価値があるか、それらは自明の理である。

しかしながら、自明の理を人間にあって守り続けることは極めて困難だ。ゆえに私はこのように世を捨て隠遁した。そして屠殺彦のことだけを思って暮らすこととした。それは単純ゆえの確固たる至福として私を満たした。

そうしているうちに、私は屠殺彦との一体化=「合流」を求めるようになった。屠殺彦グルーピーが行き着く終末の悦楽に、私も囚われるようになったのだ。だが、私はそれに疑問を抱いた。考えてもみるがいい。屠殺彦に愛し「合流」するということは、すなわち吸われるということである。

しかし、むざむざと吸われることをよしとしてよいものだろうか。それは主体的闘争/逃走の権利の放擲であり、屠殺彦への屈服だ。私はそのようなものを求めているのではない。主体的に屠殺彦を愛し、わがものとしたいのだ。屠殺彦の愛情が主体的に吸うことであるならば、屠殺彦への愛情も又同様の姿を取らなければならない――自らも漆黒の意思を持って屠殺彦を吸おうと決意しなければならない。

そうだ。私は屠殺彦を愛している。故に、屠殺彦を吸わなければならない。

それを最後に、文章は終わっていた。ここから導き出される推論はひとつだった。彼は自らの主体性をもって屠殺彦を吸おうと欲し、この「装置」を使って屠殺彦を具現化。そしてそれに愛ゆえの戦いを挑んだのだ。

「ドラゴンを果てしなく追うものは自らもドラゴンになる、屠殺彦を果てしなく追うものは自らも屠殺彦になる、そういうことか……」

私はその紙片にライターで火をつけ、煙草の種火とした。男の愛情も執念も、淡い煙となって空へ広がり、薄まり、消えて、今はもうない。ただ、その愛だけは、確実に確かなものであった。

帰りがけ、地平線のかなたに屠殺彦を観た。どちらが勝ったのかは判然としないが、いずれにしても幸せな結末であったのだろうと、私は思った。

LavonnLavonn2011/09/29 03:44I went to tons of links bferoe this, what was I thinking?

iomrmuxiaiomrmuxia2011/09/30 01:18RYFVmb <a href="http://nufxdjdvntaw.com/">nufxdjdvntaw</a>

laymmojrivlaymmojriv2011/10/01 00:17N5UG1N , [url=http://jscrakndfikc.com/]jscrakndfikc[/url], [link=http://cssfkwlhktgd.com/]cssfkwlhktgd[/link], http://irttenufiyzk.com/

AntonioAntonio2012/10/28 03:16Hahahaha. I'm not too brhigt today. Great post!

hzxtastdehzxtastde2012/10/28 15:125si65H <a href="http://mevcurpihkgt.com/">mevcurpihkgt</a>

lfadtylfadty2012/10/29 09:30bqBVW6 , [url=http://ezduisqrhpsx.com/]ezduisqrhpsx[/url], [link=http://gzyochzpvuov.com/]gzyochzpvuov[/link], http://focrsrlarllt.com/

albyjzfwjtalbyjzfwjt2012/10/29 14:49OaFUiq <a href="http://djaszepclgwv.com/">djaszepclgwv</a>

pwfdhfncpwfdhfnc2012/10/30 21:57KkvWkd , [url=http://xrdzthdvqidj.com/]xrdzthdvqidj[/url], [link=http://gtkhqhjjbfxq.com/]gtkhqhjjbfxq[/link], http://xwnkrotjigwj.com/

2007-12-21

[][]さすらいの吟遊詩人デュオ・砂と布巾 さすらいの吟遊詩人デュオ・砂と布巾 - 脚のないはてなガラス(BoB flicker side) を含むブックマーク はてなブックマーク - さすらいの吟遊詩人デュオ・砂と布巾 - 脚のないはてなガラス(BoB flicker side) さすらいの吟遊詩人デュオ・砂と布巾 - 脚のないはてなガラス(BoB flicker side) のブックマークコメント

能力

体力:3(+2)

神経反射:4(+2)

知力:2(+1)

スキル

#水鏡の盾 〔リフレクション〕

霧の防壁 〔シールドミスト〕

陥穽 〔スキルエンスネア〕

安らぎ 〔レスト〕

斬撃 〔スラッシュ〕

スキルパターン

A:地水風風(+水水)

B:剣剣水風(+地風)

C:水水水水水水

プラン

1:霧の防壁は5Lv未満では能動展開維持。剣技は報復・沙羅双樹・霧の防壁を構えている相手には使用しない。

2:基本スキルパターンをAとし、戦闘3ラウンド以降、パターンBに。5Lvでは最初からパターンCで安らぎを使用しない。

#3:戦闘した相手が財宝を持っている場合、その逃走方向に移動する。

成長

1点目:神経反射+1。スキルパターンA、Bに「水」を追加。

2点目:神経反射+1。スキルパターンA、Bに「水」を追加。

3点目:知力+1。プラン3を追加。スキルパターンCを追加。

4点目:体力+1。

5点目:体力+1。「水鏡の盾」を習得。

設定

吟遊詩人デュオ。砂がボーカルで布巾がギタリスト。宇宙的恐怖すら感じさせる音痴と冒涜的なギターテクのためか、歌では一銭も稼げず、主に魚釣りをしてその日暮しで生きていた。しかし魚が公害汚染で絶滅したため、ここ3日間、水とプランクトンしか口にしていない。迷宮には食い物を探すためふらふらと彷徨いこんだ。

秘技「オートエンドレスリフレインリターンリバースリピート」は、チューンのずれたギター(フライングV)で同じフレーズばかりをスラッシュして聞き手の神経を蝕むもの。出会ったものにはこれを聞かせて食い物をねだり、食い物をくれたら返礼としてこれを聞かせる。どのみち聞かされるほうはたまったものではない。また、演奏中に興が乗ると周囲のものをフライングVで殴りつけ始める。とにかく危険である。

「でんでろでんでろでんでんでんでんでんでろでんでろでんでんでんでん♪」

「やめろーッ同じフレーズばかりで気が狂うーッ!!」

メモ

「これちょっとやばくね?」「やばいかも」

元ネタ

トーベ・ヤンソン「ムーミンシリーズ」

ながいけん「ムーミン谷の攻防」

2007-12-15

[][]百年迷宮の魔女アステリア・TCGバトルロワイヤルプレストーリー 百年迷宮の魔女アステリア・TCGバトルロワイヤルプレストーリー - 脚のないはてなガラス(BoB flicker side) を含むブックマーク はてなブックマーク - 百年迷宮の魔女アステリア・TCGバトルロワイヤルプレストーリー - 脚のないはてなガラス(BoB flicker side) 百年迷宮の魔女アステリア・TCGバトルロワイヤルプレストーリー - 脚のないはてなガラス(BoB flicker side) のブックマークコメント

/1

長い名前の人間は死ね! なんたる理不尽な根源衝動にして戦闘原理だろうか。その不条理に捕捉され、アステリアと精霊は業火の中に包まれた。

「こんなところで、こんなに理不尽に力尽きるなんて……ッ」

アステリアは業火の苦痛と、それに勝る心中の無念に身も焦がれる思いであった。

「しかたがないのです。またリセットしてやりなおせばいいだけなのです……」

精霊の応えにも力がない。それがただの気休めにもならない、さらなる苦難の延長にすぎないことを理解しているためである。

「納得いかないッ! ここまで百年、全ての選択肢を過たず、リスクを完全に制御して、やっとたどり着いたのに、こんなランダムイベントで理不尽に巻き戻されるなんて許せないッ!!」

アステリアは崩れ行く自らの肉体を振り絞るようにして叫ぶ。

「神よッ!! いるなら返事しろ!! なぜこんな苦難を私に与える!!」

すでに手足は燃え尽き、身に潜めた魔力のみが上半身を守るに過ぎない。しかしそれでもアステリアは叫ぶ。

「苦難を与えるなら、勝機も与えろッ!! 不運を与えるなら、幸運も与えろッ!!」

胸も肩も焼け落ち、ただ首だけが残る体で、なお声にならない叫びを上げる。

「この世の均衡と秩序とやらを、この私に見せてみろ! 神よ!」

そしてアステリアは業火の中に灰となって崩れ落ちた。

/2

再びアステリアが目覚めたとき、そこはまったく身も知らぬ空間だった。無数の薬棚と実験道具、そしてグリモアが並ぶ壁。いずれ名のある魔道士の居室だろう。しかし、それは彼女の「過去」において見てきたどの風景とも異なっていた。そして――寝台に横たわる彼女を見下ろす、ふたつの人影。一方は嫣然とした微笑を浮かべる、妖艶な魔女。もう一方は、魔女に比べればまったく特徴のない――あえていえば不精さが目立つ眼鏡の女。しかし、いずれも巨大な魔力を隠そうともせず周囲に放っていた。その煌きは、眼鏡の女のほうが強い。

そして、最初に口を開いたのは、その眼鏡の女だった。

「神を試すとはなんとも豪胆な娘ね。気に入ったわ」

「あなたは――いったい?」

眼鏡の女の背負う強大な魔力の光背に気圧されながらも、かろうじてアステリアは問う。眼鏡の女は何気なく応えた。

「あたしはアハツィヒ・アイン。主なるアルセスの娘にして、森羅万象の攻め受けを司る、まあ、紀神、かな?」

紀神! 強大な力を持つ召喚士として生まれ、ノエレッテの呪いを受けて百年もの主観時間を生きてきたアステリアも、紀神と遭遇するのは――ましてやそれに話しかけられるのは初めての経験だった。主神アルセスや戦神セルラ=テリスには及ばないマイナーな神格とはいえ、目前に居るのはまぎれもない神の眷属。アステリアは畏怖し、驚愕し、言葉を失った。

「アハツィヒ様。少し驚かせてしまったようですわ」

魔女がアハツィヒに向かって云った。アハツィヒは頭をぽりぽりと掻きながら、魔女に向かって応える。

「あー。なんか最近付き合ってる人間はみんな不感症だから、神とか云っても冗談くらいにしか思わないんだよね。だからうっかり云っちゃった。この世界線では一応あたしでも権威らしきものがあるんだって忘れてたわ」

確かに、全く神らしくない。威厳というものがかけらもない。ただの、そこらにいる地味でがさつな女にしか見えない。むしろ、魔女のほうがよほど「それらしさ」を備えているだろう。ようやく驚愕から立ち直りつつあったアステリアがそこまで考えたところで、アハツィヒは彼女に向き直った。

「で、あんたがあたしを試すようなことを云ったから、気まぐれで拾い上げてあげたんだけど、よけいなお世話だったかしら?」

「――拾い上げた?」

まだ完全に思考能力が戻っていないアステリアは、そう鸚鵡返しに問い返すのみだ。

「そう。あんたがノエレッテの《ゲーム》でバッドエンドを迎えて、巻き戻しに入るところに介入して、この時間線に拾い上げたってこと。星見の塔トーナメントの直前にね」

「まあ、実際に拾い上げたのは私なのですけどね。アハツィヒ様自体は時空構造線に干渉できないのですから」

アハツィヒと魔女が云うその内容を咀嚼して、アステリアはようやく自分が「リセット」の窮地を脱したことを知った。強烈な安堵と感謝の念が沸き起こる。それを見て取ったアハツィヒは、一転して厳しい表情でアステリアに告げた。

「おっと。ありがとうとか云われる筋合いはないからね。あんたが神を試したように、神もあんたを試す権利がある」

「――それは、一体?」

恐れと疑惑を覚えつつ、アステリアは問う。

「あんたは星見の塔トーナメントに行って、もう一度あのノエレッテの閉鎖空間で戦うんだ。そして、それを勝ち抜いて来い。それができなきゃ、あんたはそのまま《ゲーム》の虜。いつまでもぐるぐる回っているがいいさ。でも、もし勝ち抜いたら――」

ノエレッテと交渉して《ゲーム》を終わらせてやる。神の権威と公正を、身を持って知らしめてやる。アハツィヒは確かにそう云った。

「やります! やらせてください!」

余りにも魅力的な条件だった。アステリアは身も蓋もなくそれに飛びついた。アハツィヒは苦笑いを浮かべると、アステリアに云った。

「現金なもんだ。だけど今のあんたじゃ、何度やっても勝機はない。勝機をよこせといったね? くれてやるとも――システィーナ、例のものは用意できてる?」

システィーナと呼ばれた魔女はアハツィヒに応えた。

「勿論です――ではアステリア。貴方に問うけど、これは一度交わしたら消えることのない契約。いえ、むしろ呪詛というべきもの。これを交わしたら、貴方はふたたび元の貴方に戻ることはない。貴方の振るう力は全て赤き血に塗れ、貴方が契約を交わした精霊もまた血に飢えたそれとなる。血塗られた殺戮の魔女。それが貴方の宿命となるのだけど――それでもいいかしら?」

システィーナの問いは酷く重いものだったが、アステリアにとってはそれすらも《ゲーム》の呪縛よりはるかに軽かった。

「ええ。それで勝機が得られるのならば、たとえ悪魔にでも魂を売ってみせる」

「それこそ神を試したものにふさわしい態度よ。嘉するべきね」

システィーナは微笑みを浮かべたまま、アステリアの胸元に指を這わせた。じっとしているように、と告げると、その赤い爪先を、アステリアの胸に沈み込ませていく。たちまち血が溢れ、薄絹を濡らし、寝台へと滴り落ちていく。不思議と痛みはない。ただ、爪が胸の奥深くに沈み込んでいくと共に、そこから熱い塊が生まれ、全身へと広がっていく感覚を覚えた。

「森羅万象の攻め受けを司る紀神アハツィヒ・アインが命により、赤槍騎士団が2位、赤き月の眷属、赤き爪のシスティーナの名において、時迷宮の魔女アステリアとの契約を締結す。この赤き爪宿りし者に、我等が真祖の恩寵を与えん。真祖の恩寵は赤き月の恩寵。真祖の恩寵は赤き血肉の恩寵。その魂と血肉の全てに、我等が真祖の真紅の恩寵を与えん――」

システィーナの詠唱と共に、意識が書き換えられていく。莫大な量の定言命令と論理式がなだれ込む。魂の初期化。魂の座に位置する根源衝動の書き換えと、それによる存在定義の更新。システィーナの恩寵が、アステリアを侵食していく。それは殺戮本能。敵の血肉を喰らい、啜り、自らの血肉とせんとする赤い狂気。そのおぞましさにアステリアは悲鳴を上げようとした。だが、声を出すことすらままならぬ。既に全身に及んだ契約の力が、彼女を縛り、支配しているのだ。視界が真紅に染まる。理性が獣性に駆逐される。そして、自らの意識が途切れようとする瞬間、アステリアは獣の咆哮を聞いた。それが自らの喉から出ているものだと意識することなく――。

やがて再び眼を覚ましたとき、全ては終わっていた。あれだけ溢れた血の跡は欠片も残っておらず、システィーナがアステリアを覗き込んでいる。

「どうかしら、我等が赤き月の一族として生まれ変わった気分は?」

視界は赤く染まっていた。全身が熱く煮えたぎっていた。血に飢えた獣の殺戮衝動が胸中で荒れ狂っていた。それを押さえ込むのに精一杯で、アステリアは声を発することすらできなかった。その様を見て、システィーナは会心の笑みを浮かべた。

「その調子なら大丈夫よ。貴方は貴方の自由意志で力を使える。獣を押さえ込むことができる。だけど――」

貴方は一生、その獣と共にあり続けるのよ、と、システィーナは云った。その口元には、鋭い牙が光っていた。

/3

「で、なんであの子に与えた力がアレなわけ?」

アハツィヒはシスティーナに問う。システィーナがアステリアに与えた力は、確かに強いが、絶対的といえるほどではない。手練の戦士相手には通用しないだろう。彼女はそう読んでいた。

システィーナは嫣然と応える。

「局面の攻め受けを変換したいという貴方の願いに応えたまでですよ。それ以上でも、それ以下でもありません」

アハツィヒは眉をわずかにひそめた。

「――なるほどね。別にあの子が勝ち抜かなくてもいい、そう考えているわけだ」

この魔女め。つくづく根性が捻じ曲がっている、と、アハツィヒは思う。あの哀れな娘を更なる試練に突き落とし、もてあそぶことにしか興味がない。不快さが募る。その顔色を窺ってか、システィーナは怪訝そうにした。

「意外です。貴方こそ、局面の攻め受け以外に興味はないと思っていたのですが」

「ああ――そうね。だからこそ、気に入らないんだけど」

アハツィヒの求める攻め受けの調和とは、万物が攻めでありながら同時に受けでもありうる構図。陰陽両儀から発し四象を生じて八卦に至る壮大な攻防一体の曼荼羅。その鬩ぎあいの中に宇宙は常に生成消滅し、安定してあり続ける。であるからこそ、過大に「受け」を背負わされ、それゆえに魂からの叫びを上げたあの娘に、それに応じた、強い「攻め」の機を与えたかったのだ。だというのに、この魔女は。

「――では、私を罰しますか? 私は主神アルセスの忠実な僕。その娘である貴方にも逆らうつもりはありません」

システィーナはしおらしく問うた。しかし、その唇には笑みが浮かんでいる。慇懃無礼な態度に苛立って、アハツィヒは刺々しく応えた。

「父アルセスの忠実な僕に私が罰を下す? それこそありえない。魔道士が言葉をもてあそぶものではないわ」

それに、アハツィヒは「賞罰を与えるもの」ではない。あくまで「攻め受けを司るもの」にすぎない。システィーナの台詞は、それを読みきってのものだ。そして、その駆け引きを――策謀と呪詛をこととし、獣性をもてあそぶこの女の性質を厭わしく思いながらも、アステリアへの救いの手として彼女を選んだのはアハツィヒ自身だというのも、また事実だった。だから彼女は溜息交じりに呟く。

「まあ、いいさ。少なくとも、アステリアは機会を手に入れた。あんたの介入によって。それをどう用いるかは、彼女次第だろうね」

「――無事に勝ち抜くといいですわね」

システィーナはくすくすと笑う。永劫線を渡り、見通す術を手にしたこの魔女には、次なる戦いの経緯すら見えているのだろう。【紀】性を持つがゆえに、全ての可能性を見る反面、ひとつの線的時間軸内での経緯を見ることは、アハツィヒには不可能だ。しかし魔女にはそれができる。彼女の【眼】――そこにはどのような結末が写っているのか。問おうとして、アハツィヒは止まった。そこまで関わることではない。所詮は気まぐれに過ぎないのなら、自分もこの魔女のようにあればいいのだ。いいはずなのだ。

だが――数多の世界線で人間に触れすぎたアハツィヒには、そこまで割り切ることはできそうになかった。

JulianirJulianir2012/08/14 18:06Please teach the rest of these internet hooligans how to write and resacerh!

apqvdyatapqvdyat2012/08/15 00:13atp3fu <a href="http://jcrnzloggzmm.com/">jcrnzloggzmm</a>

fzghxtomriwfzghxtomriw2012/08/16 14:07bIjgYz <a href="http://wrlgzpzqntnq.com/">wrlgzpzqntnq</a>

oqgjanokvboqgjanokvb2012/08/17 02:476cRLGK , [url=http://hetzotqqiwxh.com/]hetzotqqiwxh[/url], [link=http://aoqhoppdqkyv.com/]aoqhoppdqkyv[/link], http://dbpzrtoasavs.com/

2007-12-14

[][]野試合リハーサルプレストーリー 野試合リハーサルプレストーリー - 脚のないはてなガラス(BoB flicker side) を含むブックマーク はてなブックマーク - 野試合リハーサルプレストーリー - 脚のないはてなガラス(BoB flicker side) 野試合リハーサルプレストーリー - 脚のないはてなガラス(BoB flicker side) のブックマークコメント

怒号、罵声、振るわれる拳と剣。混沌と暴力の巷と化した観客席の中を潜り抜け、一散に駆け抜けるひとりの少女がいる。小さな身体に見合わぬ大きな呪具を身に纏い、巫女の徴である文身を半ば顕にしたあられない格好で走る姿は、年若き召喚士のそれだ。

走る彼女の耳元で、精霊がささやく。

「あうあう、このままだとまたバッドエンドなのです」

「判っているわ。だからできるだけ遠く離れないと。こんな分岐点でもない場所で野垂れ死にするのはごめんよ」

応える少女の口調に年相応の稚さはなく、どこかすさんだ雰囲気を漂わせている。

「これもあの魔女の仕業なのでしょうか?」

「いや、これは偶発的なもの。あの魔女ならこんなつまらないイベントを仕込んだりしない――」

精霊の問いに少女が応えた瞬間。

観客席に激震が走ると共に、一帯がまぶしい光に覆われた。

「――い、いったい何が!?」

「あうあうあうあう!!」

少女と精霊はなすすべもなくその中へと巻き込まれていく。やがてそれらが収まった後、ふたりは自分たちがまったく身も知らぬ空間に浮かんでいることに気づいた。柔らかい光に包まれた、巨大な伽藍状の空間。そのあちこちに、先ほどまで騒いでいた観客たちの姿が見える。

「あうあう……どうやらここは閉鎖空間のようなのです」

周囲に注意を払っていた精霊が結論を出した。少女は眉をひそめ、辺りを窺う。

「――ノエレッテの悪戯ね。あいつ、今度は何を企んでるのかしら」

そうつぶやいた瞬間、全くの死角から声がした。

「企んでるとは人聞きが悪いわねぇ」

少女が振り向くと、そこにはキュトスの魔女のひとりが、忽然と姿を現していた。

ノエレッテ!」

少女――召喚士アステリアはノエレッテを睨みつける。視線で人が殺せるならば、キュトスの魔女とて唯ではすまないほどの殺気を乗せて。だが魔女はそれを悠然と受け流し、ケープのすそを引き上げて、悠然と挨拶をしてみせた。

「お久しぶりね、アステリア。貴方の主観時間では721万5百15秒ぶりかしら」

「おかげさまで、まだ元気にしてるわよ」

少女はノエレッテを睨みつけたまま、口元をゆがめて応える。ノエレッテはそれを受けて、楽しそうに微笑んだ。

「そうそうその調子よ。でなくちゃ私も《ゲーム》を仕掛けた甲斐がないもの――それにしても、貴方の時間軸内での軌跡はもつれ合い繰り込まれて、まるでひとつのタペストリみたい。ただの人間がここまで面白い模様を描くなんて思っても見なかった」

「――その経緯を編み出したのは貴方でしょう。私はそれと気づかず、貴方との契約にサインしてしまった。うかつだったわ」

《ゲーム》。それはアステリアがノエレッテに掛けられた呪い。「永遠の命」を望んだアステリアに与えられた代償。無限にループする時間の中で、最適手順を発見し、それをクリアしていかなければ抜け出せない時の迷宮。

「そうね。我ながらステキな思い付きだったわ」

ふふふ、私ってなんて芸術のセンスがあるのかしら、と、自画自賛しながらノエレッテは身をくねくねさせる。内心の憤怒を押し殺して、アステリアは問うた。

「そんなことはどうでもいいわ。私たちを閉鎖空間に追い込んでどうするつもりなの?」

当然のようにノエレッテは応えた。

「もちろん、バトルロワイヤルよ。みなさん拳で決着をつけたがっていたみたいだし、せっかくだから私が舞台を用意して差し上げたわけ。あなたも付き合ってもらうわよ」

「なんでそんなことに付き合わなきゃならないのよ!」

アステリアの憤怒が噴き出す。自分には《ゲーム》という絶対課題があるのだ。こんなランダムイベントで足止めを喰らっている暇はない。そう主張しようとした矢先、ノエレッテが思わせぶりに吐いた一言が、アステリアを沈黙させた。

「これが《ゲーム》のイベントだとしても?」

「――!」

《ゲーム》。それは絶対命題。アステリアの実存を掛けた戦い。それのイベントであるならば、回避はできない。その心胆を見抜いたかのように、ノエレッテは畳み掛ける。

「勝ち抜いて御覧なさいアステリア。無事に勝ち抜けたら、今後3分岐の重要なヒントを教えてあげるわ」

「――負けたらどうなるの?」

「いつもの通りよ。巻き戻るだけ。ランダムにね。問題ないでしょう? そこまでの分岐の最適手順は覚えているんだから」

いくばくかの沈黙。アステリアは静かに応諾した。

「――判ったわ。その話、乗ってやろうじゃないの」

それを聞いて、精霊が慌てる。

「冗談じゃないのです。このままだと勝てる見込みは万にひとつもないのです」

だがアステリアは力強く応える。

「その万にひとつも、1万回繰り返せば突破できる。わたしたちはそうするしかないのよ」

「あうあう――わかりましたなのです」

精霊はアステリアの気迫に押されて頷く。そのやりとりを見ていたノエレッテが、会心の笑みを浮かべていった。

「なら決まりね。せいぜい頑張ってらっしゃい。また、時のどこかで会いましょう」

そして、その笑みを最後にして、空間へと溶け込んでいく。

アステリアと精霊は互いに見つめあい、頷くと、戦いの場へと足を踏み入れていった。

2007-12-13

[][]百年迷宮の魔女アステリアwith南東からの脅威の眷属アウアウ(野試合リハーサル版) 百年迷宮の魔女アステリアwith南東からの脅威の眷属アウアウ(野試合リハーサル版) - 脚のないはてなガラス(BoB flicker side) を含むブックマーク はてなブックマーク - 百年迷宮の魔女アステリアwith南東からの脅威の眷属アウアウ(野試合リハーサル版) - 脚のないはてなガラス(BoB flicker side) 百年迷宮の魔女アステリアwith南東からの脅威の眷属アウアウ(野試合リハーサル版) - 脚のないはてなガラス(BoB flicker side) のブックマークコメント

能力

体力:4

神経反射:3

知力:2

HP:10

スキル

イア=テムの呪いの剣

修復 〔レストア〕

報復 〔アベンジャー〕

斬撃 〔スラッシュ〕

スキルパターン

A:剣地地

B:水地地

プラン

1:地パネルは必ず自分の手番になるまでは1つ残す。ただし報復を使わないと自身が死ぬ場合は用いる。

2:自分が対戦者の半数より行動順が下の場合スキルパターンをBとするが、そうでない場合Aとする。

設定

かつては大いなる力を持った召喚士だったが、キュトスの魔女ノエレッテを召喚し「永遠の命」を望んだのが運の尽き。悪戯好きのノエレッテに、同じ時間を繰り返し、何度死のうともそのたびに時間を遡って生きることを繰り返させられるという呪いをかけられた。しかもその繰り返しはゲームとなっており、数限りない選択肢を過たずに選び続け、ごくわずかな可能性を辿っていけば、その呪いから脱出できるらしいが、しくじればすぐに理不尽な死が待ち受けている。もちろんいまだ脱出したことはない。彼女は常に理不尽な死を遂げ、そして不毛な生を繰り返しているのだ。ゆえにその存在を知るものからは「百年迷宮の魔女」と呼ばれている。

能力は彼女が召喚した使い魔のもの。南東からの脅威の眷属の一柱らしいが詳細は不明。人のようでありながら人でない、異形の姿をしている。彼女とは意思を通じ合わせることが出来るらしい。

メモ

過去エントリが編集できないのでこちらで更新。