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2008-01-15

[][紀述][物語]屠殺彦を巡る冒険(外伝)――幸せな結末 [紀述][物語]屠殺彦を巡る冒険(外伝)――幸せな結末 - 脚のないはてなガラス(BoB flicker side) を含むブックマーク はてなブックマーク - [紀述][物語]屠殺彦を巡る冒険(外伝)――幸せな結末 - 脚のないはてなガラス(BoB flicker side) [紀述][物語]屠殺彦を巡る冒険(外伝)――幸せな結末 - 脚のないはてなガラス(BoB flicker side) のブックマークコメント

ゆらぎ市で探偵をやるということは、物語作家であるというのと同じである。というのも、ゆらぎ市において一意的な現実存在せず、観測者と記述者の相互干渉によって経ち現れるゆらいだ事象を暫定的に現実とみなさなければならないからである。だからこそ、探偵が必要だ、といえる。ありうる可能性の中からあるひとつの解釈を特権的に提示してみせることで、物語を完結させること。それは警察などという無粋な集団ではなく、探偵という特権的存在こそがなしうるものだからだ。

今回の事件は単純なものだった。ゆらぎ市外域の荒野に世捨て人として住んでいた男が突如失踪した事件。付近では屠殺彦が跋扈しているという【観測庁】の警報も出ていたことだし、どうせ外出中に屠殺彦に吸われたのだろう、というのが、警察の予断だった。もちろん私はこれに反対だった。そのような散文的な事実は特権者たる探偵真実と定義されるにはふさわしいものではなかったからだ。

そこで私は被害者の自宅に脚を運んだ。地平線まで続く荒野の中心に、人を避けて建てられたその小屋は、世を捨てるに十分に孤独環境だった。そこでわたしは違和感を覚えた。我々は、自身とともに他者とも接することで、複数の観察と記述に曝され、ゆらぎ続ける存在であることができる。【観測庁】のパラノイアたちがいくら現実を一意化しようと躍起になっても、それはゆるがしようのない前提だ。しかるにこの男はそれを峻拒し、自己省察のみをもって自らを一意化しようと試みているかのようであった。そこまでして守られなければならない「自己」とは一体なんであるのか――私は興味を抱いた。

私は小屋の中に入った。住むものを失った粗末な小屋の中は、すでに衰退と風化の兆しをしめしはじめていた。舞い散る埃を払い、窓を開け放ち、光と空気を取り込んで人心地付いた後、私は小屋の中を見渡した。必要最低限の生活を営むための道具が一そろいあるだけの殺風景な部屋。彼には生活をも捨てて自己省察に挑まねばならなかった根源的な理由がある。私はそう確信した。警察の凡庸な想像力では定義できず、故に観察できなかったそれの手掛かりを、私は探した。

そこで私はふたたび違和感を覚えた。このストイック孤独環境が、単に自己省察のために――自己のアイデンティティ一意化のためのみに用いられるはずがない。ゆらぎ市内でも、それなりのゆとりがあれば、全くひとりになって他者の観測と記述から逃れうる手段はあるからだ。木賃宿のひきこもり、下水道のホームレスにでもなれば、こんなところに小屋を建てるより簡単だ。では、なんのために?

突如直感がひらめいた。この家は、彼が自らのアイデンティティを一意化するための装置であるのみならず、彼がその視界全てを自己の観測=記述領域にするための装置――すなわち彼の願望あるいは妄想を具体化するための装置であったのではないか? わたしはその仮説の下に、自身の保有する概念探偵】を展開した。普通ならば他者の観測と記述で打ち消され、狭い範囲で相対的にしか働かない【探偵】が、地平線の果てまで絶対的な効果を及ぼすのを感じ取った後、私はそれを起動した。

ひらり。何もない空間から私の前に、数枚の紙切れが現れ、落ちてきた。あるはずのない手掛かりを、私は観測によって具現化したのだ。私はそれを読んだ。

私は屠殺彦を愛している。あのシンプルで強靭な佇まい、何でも吸う貪婪さ、ただ「吸う」ことのみを求める、雑念のない確固たる主体性。それらは屠殺彦が生命として完成された存在であり、我々人間と対極的な存在であることの証だ。我々は無駄に複雑で脆く、生命力に欠け、意識などという不完全で矛盾したものにより世界を記述し書き換え続けなければ自らの存在すらも危ういし、それゆえにゆらぎ続けている。どちらが優れているか、どちらが美しいか、どちらがより価値があるか、それらは自明の理である。

しかしながら、自明の理を人間にあって守り続けることは極めて困難だ。ゆえに私はこのように世を捨て隠遁した。そして屠殺彦のことだけを思って暮らすこととした。それは単純ゆえの確固たる至福として私を満たした。

そうしているうちに、私は屠殺彦との一体化=「合流」を求めるようになった。屠殺グルーピーが行き着く終末の悦楽に、私も囚われるようになったのだ。だが、私はそれに疑問を抱いた。考えてもみるがいい。屠殺彦に愛し「合流」するということは、すなわち吸われるということである。

しかし、むざむざと吸われることをよしとしてよいものだろうか。それは主体的闘争/逃走の権利の放擲であり、屠殺彦への屈服だ。私はそのようなものを求めているのではない。主体的に屠殺彦を愛し、わがものとしたいのだ。屠殺彦の愛情が主体的に吸うことであるならば、屠殺彦への愛情も又同様の姿を取らなければならない――自らも漆黒の意思を持って屠殺彦を吸おうと決意しなければならない。

そうだ。私は屠殺彦を愛している。故に、屠殺彦を吸わなければならない。

それを最後に、文章は終わっていた。ここから導き出される推論はひとつだった。彼は自らの主体性をもって屠殺彦を吸おうと欲し、この「装置」を使って屠殺彦を具現化。そしてそれに愛ゆえの戦いを挑んだのだ。

ドラゴンを果てしなく追うものは自らもドラゴンになる、屠殺彦を果てしなく追うものは自らも屠殺彦になる、そういうことか……」

私はその紙片にライターで火をつけ、煙草の種火とした。男の愛情も執念も、淡い煙となって空へ広がり、薄まり、消えて、今はもうない。ただ、その愛だけは、確実に確かなものであった。

帰りがけ、地平線のかなたに屠殺彦を観た。どちらが勝ったのかは判然としないが、いずれにしても幸せな結末であったのだろうと、私は思った。

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