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2008-10-11【もう少し導入部】リクシャマー帝国の滅亡 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

二人の皇子は父である皇帝に分け隔てなく愛され、不穏な未来に不安を抱きながらも皇宮には平和な日々が続いた。

しかし、二人の皇子の成人も近くなった頃、一つの大事件が発生する。皇帝の事故死である。

帝国の行事である、秋狩りの最中に、皇帝の乗った馬が暴走し、皇帝は落馬してその怪我が元で逝去してしまったのだ。

当然ながら皇太子はもちろん、後継者については全く決まっていなかった。そのことによって諍いが発生することを恐れた大臣や官僚達がそのことを口にするのを憚ってきたからである。

……てな、ところまで考えてます。

さて、小説の続きです。

あ、タイトルは「蛇たちの饗宴2 ある再生者の記録」です


5.行動原理/Ⅱ

 『情報屋』の言う通り、少女、舞花は『情報屋』がオフィスとして普段使っている小さな雑居ビルの事務所にいた。彼女は不安そうな表情をしながら、俯きがちに窓の外を眺めていた。「やぁ」と我ながら不器用な笑顔で挨拶をすると、少女はゆっくりと私の方に顔を向けた。

「……」

「怖い目に遭ったな。だが、もう大丈夫だ。私は君の味方だ」

 私がそう言うと、少女は暫く躊躇った末に座っていたパイプ椅子から立ち上がり、そして私に抱きついてきた。

 余程不安な目や怖い目に遭ったのだろう、少女が震えているのが私にも分かった。私は、そっと、彼女の身体を優しく抱いた。

「……私、貴方の言う通りにしなかったから、お父さんだけじゃなくてお姉ちゃんも……」

「……知っている」

 私は、言葉に詰まる少女に、もう何も言わなくて良い、と言葉で言う代わりに、彼女を抱きしめている腕の力を少しだけ強めた。

 それだけで十分だった。

 少女は、私の胸に顔を埋めたまま、何かから解き放たれたように泣き叫んだ。

「旦那……」

「すまない、少しだけ二人にしてくれないか?」

 私が『情報屋』に言うと、『情報屋』は「へぇ」と一言答えて、部屋から出てオフィスの戸を閉めた。

 室内は私と彼女だけになった。

「すまなかったな……」

 私は、私の胸の中で泣き続ける少女にそう声をかけた。自分でも、どうしてそう言ったのかは分からなかった。

「ううん、貴方が悪いんじゃない」少女はそういって、私から離れた。「貴方の言う通りだった。ただ、それだけ」

「だが、私が御曹司の警護についていれば違う結末もあったかもしれない」

「……それは違うと思う。どっちにしても、お父さん、助からなかったと思う」

 私は、少女の言葉にどう答えて良いか分からず黙った。

「それに、私もお姉ちゃんもお父さんを見捨てて逃げるなんて出来なかったよ。だから、これは、なるべくしてなった出来事なんだ……」

 少女はそう言って私に笑顔を見せたが、それが無理をして作った笑顔なのは誰の目から見ても明らかだった。

 少女の頬を真新しい涙が伝っていたのだから……。

 私は、傍にあったパイプ椅子に腰掛けて煙草に火をつけ、そして二人の間に長い沈黙の時間が流れた。

「君は……」沈黙を破ったのは私の方だった。「お父さんとお姉さんの復讐をしたいか?」

 少女は私の言葉に大きく目を見開いてキョトンとした顔をしたが、すぐに俯いて首を横に振った。

「本当に?」

「本当はね、お父さんやお姉ちゃんを殺した奴らに仕返ししてやりたいとも思わなくも無いよ。でも、そうしたらまた血が流れるんでしょう?。もう、これ以上人が死ぬのは嫌」

「優しいんだな、君は」

 私はそう彼女に言ったが、それは他に言うべき台詞が思いつかなかったからに過ぎない。

 私はパイプ椅子から立ち上がり、「新しく潜伏先が見つかるまで、不自由だろうがここにいると良い」と彼女に声をかけ、部屋を後にした。部屋の外では、情報屋が飲み終えた缶コーヒーの缶を灰皿にして壁に寄りかかりながら煙草を吸っていた。

「それで、組の連中は未だに『御曹司』の娘を探しているのか?」

「へぇ、百合池の件があったんで、そちらに裂く人手は減らしているようですが、依然としてお嬢さんを探し続けていることには変わりありません」

 私は、缶コーヒーの缶で煙草を揉み消しながら、「よく今まで見つからなかったな、あの娘」と言った。

「子供の交友範囲ってのは、案外大人には分からないものなんですよ」

 『情報屋』の言葉に、「そういうものか」と答え、私は「それで『御曹司』の娘はどこに居た?」と聞いた。

「貴方のアパートの前ですよ。危ないところでした。あそこも本当は見張られていたんですが、百合池の件で組長が見張りを護衛に当てるために引き上げさせた直後だったんです」

「随分と無茶をしたな、あの娘」

「それだけ貴方のことを信頼していたって事じゃないですかね?」

 その言葉に怪訝そうな顔をする私に、『情報屋』はニヤリと笑って見せた。

「彼女を街の外へ逃がす事は可能か?」

「駅や街の外に通じるバスのバス停のような交通機関は全て見張られています。車を用意して、それでお嬢さんを街の外へ逃がすことは難しいことではありません。ただ、問題は逃がした後です。奴らが追跡を諦めるとは思えません。逃げていても、必ずどこかで尻尾を掴まれます」

「だろうな……」

 私は新しい煙草に火をつけながら言った。

 あの執念深い組長のことだ、外国へでも逃亡しない限り日本中に部下を遣って彼女を探し回りかねない。

「『御曹司』や先代に縁のある、独立系の組に保護してもらうということは?」

「中国系マフィアとかの外国人マフィアに預かってもらうことも考えましたよ。でもね、先代や『御曹司』と縁のあった組織は軒並み組と友好関係にあるんです。それに組は、先代や『御曹司』の居た頃よりずっと大きくなっているんですぜ。その組と事を構えてまで仁義を守ろうという組織はありませんや」

 それに、それらの組織が彼女を神輿に担いだりして事を起こす可能性も排除できない。私はできれば少女をそんな醜い争いの渦中に置きたくは無かった。

「組の若頭は藤遠さんだったな。あの人は、今回の件、どう思っているんだ?」

「へぇ、藤遠さんは元々『御曹司』は周りが担ごうとしても神輿にならないと主張してらっしゃいましたから、口にこそ出してませんが、お嬢さんに関してこれ以上手を出すことには反対でしょうね。でも……旦那?……まさか!?」

 私は何も答えず、煙草の煙を吐き出した。私の考えが分かったのだろう、「無茶だ、旦那!」と『情報屋』は言った。

「旦那がいくら、そんな力を身に付けたからと言って、相手は……」

「私はね、不器用な男だ。だから、不器用には不器用なりの決着しかつけることはできない」

 私がそう言うと、『情報屋』は絶望的な顔になって頭を抱えて座り込んだ。

 彼はきっと、逃げるものなら逃げたいし、裏切れるものならさっさと裏切りたいだろう。だが、逃げようにも、裏切ろうにも私に呪縛を受けていてそれは不可能なのだ。

「だが、まだそうすると決めたわけじゃない。何をするにしても今は情報が足りない」

「そりゃ、そうですがね……」

 情けない顔をして、『情報屋』は腰を上げた。

「とにかく、お前は俺に言われたことをやってくれ。それと、藤遠さんと話がしたい。連絡役になってもらえるか?」

「……どうせ、断ることはできないんでしょ?」

 『情報屋』はそういうと、トボトボとその場を後にしようとした。

「それともう一つ」

「まだ何かあるんですかい?」

「『御曹司』の御令嬢をいつまでもこんな汚い場所に匿っておくわけにもいかないだろう?。どこか適当な場所を確保してくれ」

 「否定はしませんが、汚いはあんまりでさぁ」と言って、『情報屋』は場を後にした。

 私は、再び扉を開けて事務所内に入った。少女は、すっかり安心しきったのだろう、パイプ椅子に寄りかかって静かな寝息を立てていた。

 私は室内を見回し、古いソファがあるのを見つけると、少女を抱え上げてソファまで運び、外套を脱いでかけた。

 ……本当に、なぜ、私はこんなことをしているんだろうな?

 私は、少女の寝顔を見ながら、そう思った。分からなかった……少なくとも生前の私は人に情けを掛ける性格ではなかったし、『任務』以外では極力厄介ごとは避けるタイプの人間だった。

 ……なのに何故?

 蘇って別人にでもなったというのだろうか?。いや、そんな筈はなかった。一度死んで蘇ろうと、私は私のままのはずだ。

 私はパイプ椅子を持ってきて少女の傍に置き、腰を下ろした。

 疲れていたからだろうか、私の意識はやがてゆっくりと白い眠りの闇へと落ちていった。

 だが、意識が完全に白い闇に落ちる寸前に、私は思い出していた……いつか見た夏の日の夕焼けの公園を…ベンチに腰掛けた幼い日の私と、その横にすわる年上の少女を……そして、彼女が言った言葉を……

「この世が『奪う人』と『奪われる人』だけじゃ哀しいからかな?。誰か、『与える人』がいてもいいと思うから……かな?」

 幼い日の私はその言葉をどうとらえたのだろうか?。今となっては、もう思い出すことはできなかった。

 

 

 事務所に差し込んだ朝日と街の喧騒で私は目を覚ました。

 目を覚ますと、少女は既に起きていて、テーブルの上には幾つかの菓子パンがコンビニの袋に入って置かれていた。

「どうしたんだ、これ?」

 私が聞くと、少女は黙ったまま窓の外を指差した。この事務所がある雑居ビルの前には小さなコンビニがある。そこで買ってきたというわけだろう。昨日『情報屋』に言った台詞ではないが、本当に無茶をする子だ。

「食べる?」

「いただこうか。だが、次からはこういうことはしないで欲しい」怒る気にもなれず、私は静かな口調で言った。「君は追われている、その立場は忘れないほうが良い」

 ……早いうちに、ここは出払った方が良いかもしれないな。

 私は思った。この事務所とコンビニは僅かな距離だが、彼女が組の人間に目撃された可能性もある。少なくとも、今彼女が組の人間に発見されるのはまずい。

「一つ質問しても良い?」

「何だい?」

 私は菓子パンを頬張りながら答えた。

「貴方、どうして私に味方してくれるの?」

 ……どうして?、か……

 私は菓子パンを咀嚼しながら考えたが分からなかった。

 『御曹司』に恩があるから、というのは答えとして間違えではないだろう。だが、それだけでは無いのは確かだ。人としての理性や道徳というのなら、それはお笑い種な回答だ。私は既に理性だの道徳だのを語れないほどに人の道を踏み外している。そして、それは自分で選んだことだ。

 ……ではなぜ、人の道を踏み外すことを選んだ?

 それもまた分からなかったので、俺は考えるのを止めた。「何故」を繰り返していると、そのうち疑問の迷宮に入り込みそうだったからだ。

「さぁ、分からないな」

 だから、私は素直に答えることにした。

「貴方、見た目と違って優しい人だから……というのは駄目?」

「『優しい』というのは『無力』の同義語だ」私は言った。「『優しさ』で人は救えないし、自分も救えない。『奇跡』で人が救えないのと同じだ」

「貴方は『無力』なの?」

 私は少女の言葉に答えることが出来なかった。否定も肯定も出来なかったからだ。

「間抜けだからかもしれないな」やっと出した回答はそれだった。「覚えておくと良い。世の中には『優しい』の意味が理解出来ずに、自分の間抜けさを勘違いして背伸びして他人を助ける馬鹿がいる。君はそういう馬鹿を利用して生きていくと良い」

「私、そういう考え方って嫌だな」

 少女は不満そうに言った。

「嫌でもそれが真実だ。世の中は『強い奴』が『弱い奴』から、そして『賢い奴』が『馬鹿な奴』から奪うことによって成り立っている。例外などない」

「貴方の考える世界に『与える人』は居ないの?」

 私は、少女の言葉に一瞬ハッとなった。昨日眠りに落ちる前の一瞬の刹那に見た、封印していた記憶の断片が蘇ったからだった。

 ……夕方の公園……幼い私と隣に座る年上の少女……少女は、身体のあちこちに出来た私の怪我を濡れたハンカチで優しく拭いてくれていた……そこまでは前に見た回想と同じだった。だが、私は今度は、はっきりとその時の会話を思い出していた。

『なんで俺なんかに、いつも優しくしてくれるのさ?』

 少女に問いかける私。

『俺、分かってるんだ、本当はみんなが俺のことどう思っているかって……チンピラの息子、みんな俺の事、そう思ってるんだ』

『それでも、君は君でしょ?』

 覚えている限り、少女は優しくそう言ってくれた。

『知ってるの?。世の中には奪う奴と奪われる奴しかいないんだ。父ちゃんがそう言っていた。だから、俺、絶対に奪う側に立ってやるんだ』

 なのに私はそう答えていた。きっと、優しくされることに慣れていなかったからだ。

『じゃ、私は与えて助けてあげる人になりたいな』

 そう答えた少女は微笑んでいた。けれど、その笑顔がひどく子供心にも切なく無理をして作っている笑顔に見えた。

『与えて助ける側なんて、自分の間抜けさを勘違いして背伸びしているだけの奴だよ。父ちゃんがそう言っていた』

『そうなんだ?。それでも、私は他人に与えて助けたいな』

『どうしてさ?』

 私の問いに少女は暫く首をかしげて考え、そして私の顔を真っ直ぐに見つめて笑顔で言った。

『この世が奪う人と奪われる人だけじゃ哀しいからかな?。誰か、与える人がいてもいいと思うから……かな?』

 きっと彼女はその言葉を本気で言ったのだと思う。なぜなら私を見据えるその瞳は、子供の私から見てもまっすぐに見えたからだ。

「ねぇ、どうしたの?」

 少女に言われて、私は我に返った。

 「いや、ちょっと考え事をしていたんだ」と私は答えたが、どうして私が彼女に味方しているのか少しだけ分かった気がした。

 ……要は、単なるノスタルジーなんだろうか?

 だが、どうしたことかそれも悪い気がしなかった。

「何にせよ、今回の件の片がつくまで甘い考えは捨てるんだな。どんな理想や理屈も生きていてこそ意味がある」

 少女は無言のまま私の言葉に頷いた。

「それを分かってくれたならそれで良い」私はそう言うと、ジャケットの内側のホルスターから、小型の拳銃を取り出して少女の手に握らせた。「持ってろ。その銃ならば反動も少ないから君でも扱える」

「……」

「本当ならば、この件が終わるまでいつでも君の傍に居てやりたい。だが、君を守るためには私も色々とやらなければならないこともあるからそうもいかない。だから、いざという時は自分で自分の身は守るんだ」

 少女は自分の掌の上の銃を暫く眺めていたが、その視線を私に向けた。

「銃は最期の武器だ。まずは逃げろ。逃げてどうしても退路がなくなった時に使うんだ。当てようと思うな。動く標的に当てるのはどうせ難しい。銃を持っているということと、発砲する覚悟がこちらにはあるというだけで少しは相手より優位に立てるし、相手に隙もできる。それはそのための道具だと思え」

 言って私は思わず真剣な表情を崩して噴出しそうになった。その台詞は、私が最初の『任務』の時に彼女の父親、御曹司から言われた言葉と寸分違わなかったからだ。

 「分かった」と少女が答えたのを聞いて、まさに言葉は世代を巡り巡っているわけだ、と私は思った。

 私が今日言ったこの言葉も、少女が大人になった時に誰かに語り継ぐのだろうか?。できれば、そうなって欲しくないと思う。

「その代わり、一つだけ私と約束してもらえる?」

「何だ?」

 私が聞くと、少女は私から視線を外し、伏し目がちになって黙り込んだ。

「黙っていたのでは分からないな」

 それでも少女は黙り続け、そしてやっと何かを言うために口を開こうとした。

 携帯電話が鳴ったのはその時だった。電話は『情報屋』からだった。

「旦那、若頭の藤遠と話がつきました。場所と時間によっては話をしても良いそうです」

「そうか。それでは場所と時間だが……」

 私は『情報屋』に場所と時間を告げると、少女によってちゃんと折りたたまれてソファに置いてあった外套を掴んだ。

「暫く出かける。君はここにいてくれ。携帯の番号を書いておくから、何かあったら連絡しろ。いざという時の行動は、さっき言った言葉を忘れるな」

「……まずは逃げる」

 「そういうことだ」と言って、私は事務所のドアノブに手を掛けた。「待って」と、少女の言葉がドアノブを回そうとする私の手を止めさせた。

「あの、さ……さっきの約束の件なんだけど」

 少女は暫く間をおき、そして俯きながら「やっぱり良い」と言った。

「何でもないの。ごめんね、時間とらせちゃって」

「……そうか」

 私は首をかしげながら今度こそドアを開けた。

「いってらっしゃい」

 その背中に、少女は優しく声をかけてきたが、私はそれを無言で受け流した。そうとしか生きられなかったのが私の生き方だった。

BeatriceBeatrice2011/05/25 15:58That's the best asnwer of all time! JMHO

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DaikyDaiky2013/01/29 21:39This shows real expertise. Thanks for the asnewr.

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