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2007-04-03【第二次建国戦争】 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

北方帝国は一度、リクシャマー帝国に制圧されてしまうわけですが、その10年後、帝国の遺臣達が各地で反乱を起こし再び独立を果たすわけです。

制圧時には、二、三の激戦はあったとはいえ、殆ど無抵抗だった北方帝国がなぜ再び反乱を起こしたかといえば、これは税金の問題です。

リクシャマー帝国は殆ど独力で北方帝国を制圧してしまい、スタイラス条約という北方帝国に対抗する意味で諸国が結んだ条約の「叛徒(北方帝国)制圧の後には領土を、反乱以前の状態に戻す」という条項の履行が嫌で、一方的にこれを破棄してしまうわけですが、当然のことながらこれを不満とした諸国との間に戦争が起きてしまいます。まぁ、他の諸国から見ればリクシャマー帝国だって、もともとはロズゴール王国から独立を僭称している叛徒ですから当然の成り行きです。

そして、決定的だったのが【魔術師師団】です。これはただでさえ金食い虫な軍隊なのに、10年の間に諸国も同じ【魔術師師団】を持ってしまったわけで、魔法と一緒に多額の国費も飛ぶという状態でした。

そこで、戦費の負担を、今や植民地になった北方帝国への増税で賄おうとしたのですが、もともと北方帝国があっさりとリクシャマー帝国に下った理由は、各地の諸侯に、自分達に味方したならば税金を現状維持することを約束していたからで、当然のことながらこれを反故にされては諸侯も黙ってはいません。

かくして、各地で反乱の火は上がり、激しい戦いの後、ついに諸国を納得させ戦争を終わらせるためにリクシャマー帝国北方帝国からの引き上げを宣言します。

その後、各国は争うようにしてリクシャマー帝国の引き上げた北方帝国へと侵攻しますが、新たに皇帝を立て団結した北方帝国の前に敗退し、北方帝国は二度目の独立を果たすわけです。

さて、メクセトと魔女リライト中なのですが、とりあえず別個に書いている小説の最初の部分だけ掲載したいと思います。

以前書いていた、「蛇達の饗宴」の続編にあたる話です。

今度はハードボイルド&ピカレスクのつもりです


0.終末

 あの勝ち目の無い仕事を引き受けた理由は何だったのか?

 恩義?、仁義?、それとも故人への思い出?

 おそらくはどれも間違いだろう。

 答えは感傷と、疑問に対する答えが欲しかったからだ。

「私はなぜここにいるんだろう?」

 それは俺があの仕事に就いていたときに何度も考えた疑問だ。

 引き金を引く度に、引いた引き金によって撃ち出された銃弾が人を傷つけるたびに、そして命を殺める度に私はその疑問を頭の中で考えていたのかもしれない。

 だが、それは裏返せばこんな疑問に対する答えを求めていたということではないだろうか?

「どうして、私はこんなことをしているんだろう?」

 それは別に後悔からくる疑問では無かった。ただ、純粋に、今の自分に至る道筋が知りたかっただけだ。

 そして、結局その答えは得られなかった。

 銃弾が私の額を貫き、私の意識が闇へと落ちていったからだ。

「私はなぜここにいて、どうしてこんなことをしているのか?」

 確かなことは、硝煙と血反吐にまみれたその死の今際ですら答えを出すことが出来なかったということだ

 

 私は、確かにその時死んだ……

 死の直前に走馬灯も見なければ、自分の享年も思い出すこともできなかった。

 

 

1.亡者再生

 よろめいた体を支えるため踏み出した右足が踏んだ地面の感触が私の目を覚まさせた。

 ……ここは?

 昼間の街の雑踏の中だった。

「私は……確か……」

 死んだ、確かそのはずだった。

 覚えている。頭を貫通して言ったあの銃弾を、激痛を、そして死の今際に考えた疑問と、自分の意識が闇へと落ちて行く前にみたあの光景を……降り始めた雨の中で、硝煙の煙がかき消されていた、あの光景……現役時代に幾度となく目にして、心のどこかで、私の最期もこんな光景なのだろうと考えていた光景

 だから、私は生きているはずはない。だとすれば、ここは……

「あの世?」

 それにしては、この光景はあまりに私の知っている光景に似すぎていた。

 私は一歩前に踏み出し、雑踏に耳を傾ける。

 子供達の会話、若者達の会話、そして大人たちの会話……思い思いに交わされるそのとりとめのない会話は、生前に聞いたそれと何ら変わりが無いものだった。

 ……では、私は?

 私は、近くのコンビニに入ってみることにした。

 ドアが開き、店員がマニュアルどおりの挨拶を私に送る。

 私は、幽霊でもないらしい。

「失礼だが、君……」

 私は店員に声をかける。

 「はい?」と愛くるしい笑顔を向けた女性店員に、「いや、良いんだ」と私は質問することを止めた。

 代わりに、ポケットの中に小銭と何枚かの紙幣を見つけ、それで新聞とパンを幾つか買い求めた。

 もし私が死人ならば、おかしなことだが腹が減っていた。

 コンビニ袋を下げ、近くの公園まで行くと、私は開いているベンチを見つけて腰を下ろした。

 空は抜けるように青かった。

 私は、パンを齧りながら新聞を広げた。新聞の日付は私が死んだはずの日から数日後の日付になっていて、そこにはいつものように異国での戦争と、国内での政治家による汚職事件と、いくつかの事件について書かれていた。

 ……私は、生きているのか?

 安堵して良いのやら分からず、私は溜息を漏らした。

 ……煙草が欲しいな

 腹が膨れた次にそんなことを考えたのは人の業かもしれなかった。だが、その業を背負っているのならば私は間違いなく生きているのだろう……か?。

 自らの生への確信の持てないまま、私は立ち上がり、煙草を買うために街へと戻った。

「……次のニュースです、××市で起きた強盗殺人事件についてですが……」

 家電屋の店頭ディスプレイされたテレビの伝えるニュースに、私は思わず足を止めた。その××市というのが、今まさに私のいる街だったからだ。

 ……この街も物騒だな

 私は思ったが、考えて見れば自分がそう考えるのは酷くおかしなことだった。

 表にこそ出ていなかったが、かつては私だって任務のために、普通人間が見れば物騒なことを随分とやらかしたのだから。

 私は、家電屋の前を離れようとしたが、次の瞬間その足が止まった。

警察発表によると死亡したのは、市内の公立高校に通う梅谷 繭さん(17)で……」

 その名前は私が知っている名前だったからだ。

「……事件直後から同居していた妹の梅谷 舞花さん(15)の行方が不明になっていることから、警察舞花さんも事件に巻き込まれたのではないかと考え、捜査を行っています」


 彼女通夜が行われていたのは、小さくて古い斎場の部屋の一つだった。

 私は、わざと告別式が終わるまで斎場の外で待ち、来客が居なくなったのを見計らってその部屋に入った。

 何となくだが、私が生きていることを知られてはならない気がしたのだ。

 だが、その心配は杞憂だったかもしれなった。詰まれた香典袋や記帳用のノートを見る限り、あまり弔問客は居なかったようだ。

「あの、あなた、どういったご関係の方ですか」

 死んだ少女とはどのような関係だったかは分からないが、中年女性が怪訝そうな顔をしながら私に声をかけてきた。

 無理も無い、私は喪服姿でもなければ香典袋の一つも持ってこなかったのだから。

 ……喪服ぐらい買うんだったな。

 私は今更ながら後悔した。今まで、「礼服ぐらいは買っておくもんだぞ」と何度も言われてはいたが、「そんな物必要無い」と私はいつもその申し出を拒んでいた。自分のような裏家業人間は死んでも行方不明扱いで死体は『掃除屋』が綺麗に酸で溶かして土に返してくれて終わりであるべきで、冠婚葬祭など必要はないと考えていたからだ。

 ……しかし、今更後悔するなんてな

「あの…」

「あぁ、彼女の父親には生前大変にお世話になったもので、そのお嬢さんにせめてご焼香だけでもと思いまして……」

 私は答えた。それは少なくとも嘘ではない。

 組が跡目相続でもめた時、私は彼女の父親の側の人間だった。ただし、自分の意思でそうしたわけでもなく、ただ当時の自分の兄貴分にあたる人間が彼の側に付いたからだったから自分もそうしただけに過ぎない。

 もっともその兄貴分は、私が以前言った「裏家業人間」のような死に方はしなかった。

 轢き逃げによる交通事故死、それが彼の死因であり、死体は『掃除屋』に溶かされず、彼の家族だけによる葬式の後で火葬されて墓に入れられた。当時跡目争いで二分されていた組の貧乏籤を引いて見せしめのために分かりやすい殺され方をしたのだ、というのが、まだ裏家業をしていた私達のもっぱらの噂だった。

「そうだったのですか。それではこちらへ……」

 そう言って、彼女は私を焼香台の前まで連れて行ってくれた。

 写真の中の少女に私は生前会ったことは無かったが、会ったことのある彼女の妹の顔に良く似ていた。

「どっちも女房似でね……」

 生前の彼の言葉が頭の中で蘇った。目に入れても痛くない、とでも言わんばかりの親馬鹿ぶりのその言葉を聞いた時、この人はどうして俺にそんな話をするんだろう?、ということをぼんやりと思ったことを思い出した。

「ところで、奥様はどちらに?」

 焼香を終えて、私は聞いたが、「居ないんですよ」と彼女はぽつりと答えた。

「3年前ぐらい前にね、男を作って出て行ってしまったきりなんですよ。育児放棄ってやつかしらねぇ」

「そう……だったんですか」

 驚いたような口調でそう言ってみたが、本当は零落した極道の末路などそんなものだ、ということを私は色々と例を見てきたので予想はついていた。金も女も上り調子にいるからこそ手に入るのであって、それを自ら降りたとあってはどちらも逃げて当然なのだ。

 ……お人好しの温室培養されたあんたにはそんな簡単なことも分からなかったんだろうがな。

 私は、心の中でそう故人を蔑んでみたが、なんだが結局は自分で自分を賤しめている気がした。

「その一年後にはお父さんも体を壊してしまって……繭ちゃん、アルバイトをしながらお父さんと舞花ちゃんを養っていたんだけど、それがこんなことになってしまって……舞花ちゃんもどこでどうしているのか分からない状態で」

 今頃どこでどうしてるのだろう、と彼女は言ったが、私はそれ以上彼女言葉を聞いていなかった。

「あなたのせいでお父さん死んじゃったじゃない!」

 私は、今や骸となった少女の妹が言った言葉と、その怒りを込めたまっすぐな瞳を思い出していたからだった。

 

 

 少女、梅谷 舞花に出会ったのは、あの新聞の日付が正しいのならば2週間前のことだった。

 その頃、私は仕事中に負った怪我が原因で裏稼業から足を洗い、組から貰った『退職金』で一向に慣れぬ普通の日々を過ごしていた。跡目争いの終わった組としては、敗北した勢力に組していた、しかもロートルになってこれから腕が鈍っていく一方の私を見切る良い機会だったのだろう。『退職金』は決して少ないものではなかった。

 だからと言って、組を辞めてやりたいことがあるわけでもなく、私は『退職金』を食いつぶしながらブラブラとする毎日を送っていた。

 そんな、日々の中で彼女は現れた。

「あなた、お父さんの部下だった人でしょ?」

 アパートの私の部屋の前で蹲る学生服少女に声をかけようとした瞬間、彼女は唐突に話をそう切り出してきた。

「お父さん?」

 怪訝そうに聞く私に、少女が返してきた名前は、忘れようにも忘れられない名前だった。

「じゃ、君は『御曹司』の……」

「私、娘の舞花です」

 ……そう言えば、娘の一人がそんな名前だとか言っていたな。

 私は記憶の井戸から、薄れかかった男の記憶と共にそんな記憶を汲み上げていた。

「その、舞花ちゃんが私に何の用かな?」

「お父さんを守って欲しいの」

 私は一瞬言葉を失った。少女が口にした言葉の内容も理由の一つだったが、それ以前にその目があまりに真剣な感情を露にした目だったからだ。

 

 

 私がそれに気付いたのは、中年女性が語る故人になってしまった少女の思い出話を、適当に頷いたり相づちを打ったりして聞き流している最中だった。

 ……何かが近づいてくる

 それは気配とか、そういうものとはまるで違うものだった。しかし、何かが私に近づいてきているということは、根拠があるわけではなかったが確信できた。

 ……来る、もうすぐ来る

 私は、慌てて、中年女性が話の途中であるのも構わず、その場を後にした。

 斎場を出ると、その何かが近づいてくる感覚はより強いものに変わっていた。

 ……来る……逃げなければ、ここから逃げなければ

 こみ上げてきた恐怖に、私の足は思わず夜の街へと逃走を始めていた。

 その恐怖の理由と正体が何なのかは私には分からなかった。だが、逃げろ、と私の中の何かが緊急信号を発していたのだ。

 私は雑踏の中へ逃げ込み、行きかう人々を避け、掻き分け、時に突き飛ばして逃げ続けた。

 気付けば何時の間にか、私は昼間のあの公園にいた。

 あの強迫観念にも似た、何かが迫ってくる感覚は既に無くなっていた。

 私は安堵の溜息を吐き、ポケットから昼間買った煙草の箱を取り出して、一本手に取った。まだ手が震えていた。

「ばぁ!」

 そんな緊張感のない台詞と共に、少年が私の前に唐突に姿を現したのは、私が煙草に火をつけようとした瞬間だった。

 銀髪の、北欧系だろうと思われる顔立ちの少年

 私は、驚いたというより、あっけに取られて思わず煙草を落とした。

「なんだ、驚かないのか……」少年はがっかりしたような口調で言った。「驚いてくれたほうが話が早かったのに……」

「いや、驚いているよ」

 私は答えた。

 確かに今更ながら驚いていた。

 何故、この少年が目の前に現れるまで気付かなかったのか……裏稼業が長い私だというのに、気配はもちろん視覚ですら目の前に彼が現れるまで気付かなかった。

 何故、この少年は私の前に現れたのか……悪戯っぽい笑みを浮かべる少年のことを私は知らない。生前のどの記憶を辿っても彼の顔は現れない。

 そして、何故あの気配が突然消えたのか……間違いは無かった、あの私を追って迫ってきた気配はこの少年のものだった。

「ふうん、そうは見えないけどね。まぁ、構えないでよ。同じ『再生者(リボーンズ)』の『探索者(サーチャー)』の能力の持ち主同士なんだからさぁ」

 ……『再生者』?……『探索者』?……

 少年の言う単語は、私には意味不明だった。

「何だか、何も分からないって顔をしているね」呆れたような表情で少年は言った。「あんたは、一度死んで蘇った。そのぐらいは分かってるんだろ?」

「やはり……私は死んだのか?」

 私が言うと、「なんだ、そこから説明しなきゃ駄目か」と少年はさらに呆れたように肩をすくめた。

「そ、あんたは死んだんだよ。どうやって死んだか分からないけど、再生不可能な状態でね。そして、生前と同じ体を持って蘇った、普通人間としてではなく『再生者』としてさ。おまけに、普通の『再生者』だったら余程修行を積まないとなれない、『探索者』の能力も備えて蘇ったんだよ。その意味では僕とあんたは同類なわけだけど……聞いてる、人の話?」

「あ、あぁ」

 もちろん、私は少年の話は聞いていた。ただ理解出来なかっただけだ。

 ……死んで蘇るなんて、そんな馬鹿なことが……

「まだ、半信半疑のようだけど、残念ながら僕の話は真実だよ」そう言って、少年は私の前に一歩踏み出した。「僕が教えてあげるよ。あんたがどうなったのか?……何が出来るのか?……どうすれば良いのか、をね」

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