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2008-08-15

大ヤミーについて

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 とにかくでかいという印象だった。でかいのだけど、小ヤミーと姿かたちは同じだ。瓜二つの相似形というわけだ……相似比だけは、数百倍もあるけれど。

 でかいだけに、頭はあまりよくなかった。でも実は脚力がやたらあって、その背中に乗って空を飛ぶのは気持ちよかった。

ニード・モーモについて

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 ぶっちゃけただの蛇だ。ただの蛇というか、でかい蛇なのだけど。獲物を締めるときだけでなくて、友達ににじゃれつくときも、この蛇は同じように胴で巻きついてくる。そういう風にしてしか、こいつは誰かと関わることができなかった。

カチナシ・ジーノントについて

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 自分自身の真似をする、というのは私たちがいつでもやっていることだと思う。ただカチナシの場合、なぜかそれが目の前の相手に向いてしまうだけだったらしい。「真似」を放棄したカチナシは、だからとても強かったはずだ。

死馬右京について

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 死馬右京は山を愛していた。それなのに、山にとどまる自分の存在が結局は山に仇をなしていることにも、心の底で気づいていた。だから、最期の時の死馬右京の顔は、あんなにも安らかだったんだと思う。

 

アムネットについて

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 ちょっと前に、彼女とはいろんな話をした。彼女は獣として育てられたけど、普通の女の子としても育てられた。だから、話は合った。戦いが終わったら、ケーキを作ろう……そう約束させられたときは、正直ちょっと後悔した。あんた本当に帰ってくる気あったのかと文句言いたくなったけど、彼女はわりと素でそういうことを言う子だった。彼女は本気で勝って帰ってきて、私とケーキを作りたかったのだ。

シュハルツについて

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 そんな獣はいない、という性質を持った獣だった。

ヨ・チェダラーテ屠殺彦様について

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 あまりのイケメンっぷりに正気を保つ自身がなかったので、遠くからご尊顔を拝見するだけにとどめておいた。今思い出しても身が震えるし涎もちょっとたれた。見苦しい文面にしたくないのでここで筆を止める。

オーシャットについて

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 こいつはけっこう饒舌に喋る兎だったんだけど、ザリスとだけは一切口を利いてやらなかった。拳で心を伝え合う中に、言葉は不要という理屈らしい。まあ、ザリスはあれで大事にされてたわけだ。

 自分のことを、割と素直にザリスのペットだと思っていたそうだ。

カッサリオについて

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 実を言うと、カッサリオはカチナシに負けていない。勝ったのはカッサリオで、ネオコージェと戦ったのもカッサリオだった。

小ヤミーについて

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 こいつらは小さいが沢山いる。それはもう無数に、どのくらい沢山いるかというと、あの【G】とタメを張れるくらいだ。世の中が小ヤミーで溢れかえらなくて、よかったと思う。

 群体は気持ち悪けれど、近くで一匹を摘み上げて見ると、これがなかなか可愛かった。でもちいさいだけに、頭はあまりよくなかった。

マーシクフについて

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 理性の赴くままに生きて、理性の赴くままに死んだ。こいつにとって理性って、そういうものだったらしい。

ヨ・ジークシンについて

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 こいつって結局、序列の上でいちばん弱いアムネットに勝って、あとはゴキブリを一匹プチッて潰しただけだ。実はあんま強くなかったんじゃ……。

シバラハシアについて

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 キュトスの死に抵抗して生まれてきた魔女たちは、本質的に滅びに立ち向かおうとする。シバラハシアの目的も、まさにそれだった。魔女の叡智を得ていた彼女は、これがどういう戦いか知っていたのだ。

 その強さでいちばん多くの獣を倒した彼女は、やっぱり同じ理由で負けてしまった。相手の方が強かったという、しごく当然の理由で。

ネオコージェ・カッサリオについて

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 カッサリオ・ネオコージェは既に父親を超えていた。だから、目の前にいる自分より弱い存在が父親だとは認められなかった。あれは、そういうことだったんだと思う。

 自分より強いという幻の父親像を追って、彼女はこれからも戦い続けるのだろう。それが彼女の業といういことらしい。

そして、ザリスについて

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 理獣マークシフから、おおかたのことは聞いていたらしい。私もダーナから同じことを聞かされていた。獣は全部で二十匹。十九匹が雌で、一匹が雄。だから雌は一匹まで減らなければならなかった。パンゲオン・ライオットのルールに従うなら、私たちはこれから子供を産む。"雄獣"である私を父親として、"雌獣"であるザリスを母親として生まれるのは、次世代のパンゲオンだ。宇宙更新獣パンゲオンは、この宇宙が行き詰まった時に現れて、全てを初期化する。そして、全てをやり直すのだ。次の宇宙は、今よりも少しだけましな宇宙になる。それを繰り返せば、いつか私たちは幸せな世界を掴むことができるかもしれないのだ。

「だって、間違ってるもの。生け贄になるために生まれてくる私たちみたいな子が沢山いるこの宇宙は、間違ってる。何度も、何度もやり直せば、いつかそういう子たちのいない宇宙に生まれてくることだってできると思う。だから……ねえ、ザリス。私の仔を産んで」

 ザリスは表情を変えない。私に対する同情も、哀れみや反発も見いだせない。

「……あんたと同じ考えで、あんたの反対に立った奴の話を、理獣に聞いた」

 ザリスは、私の知らない話をした。ダーナが私に聞かせなかった話だ。その話では、ある女神がパンゲオンと戦い続けている。どの宇宙でも必ずやってくる世界の更新という名の滅びを阻み、"今の世界"を守り抜くため……女神はいつか自分が勝てると信じ、更新の日の次の日に辿り着くため、無限の時を戦い続けている。

「そんな話して、ずるい。ザリス、あなたはどうしたいの」

 ザリスは返事をしない。なんのことはない、言葉に詰まっているだけだ。ザリスだって、迷っているんだ。

ザリス、どうしたいの。答えて、ザリス

 ザリスはまだ迷っている。私は声を張り上げる。

ザリス、ねえ、答えて! ザリスはあたしのこと好きなの? 嫌いなの!?」

 とても長い間迷ってから、最後にザリスはたどたどしく答えた。

「わ、私ヘテロやったから、こういうのすごい難しいし……。こ……断っとるんとちゃうねんで、でも、と、とりあえず……友達からはじめよっか」

 そして結論は当分出ない。私は少しだけ先走って、恥ずかしがるザリスの手を軽く握った。

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2008-08-14

ネオコージェvsシバラハシア

| 01:33 | ネオコージェvsシバラハシア - 烏兎紀 を含むブックマーク はてなブックマーク - ネオコージェvsシバラハシア - 烏兎紀 ネオコージェvsシバラハシア - 烏兎紀 のブックマークコメント

 ザリスがマーシクフとグレンデルヒの死を看取っていた頃、また別の場所でネオコージェとシバラハシアが邂逅していた。両者は激突する。ネオコージェが戦う理由は己にあった。カッサリオはネオコージェと戦うことなく死んだが、ネオコージェはそれでもなお父を超えることを望んだ。父を超えるために、父を超える者を超える。それが、一度は挫折したネオコージェが新しく見いだした全霊を賭けた戦いだった。一方、シバラハシアは殊勝にも世界のために戦った。魔女として生まれた彼女は、この戦いが世界を滅ぼす獣を生むための戦いであることを知っていた。だから、それを阻止するため、自分自身が勝者となる。シバラハシアは世界の命運を背負わんとしていた。両者は、全く異なる理由で戦っていた。しかし、この戦いの勝敗は、戦う者の理由によらない。勝敗は、思想によって左右されない。思いの強い者が勝つのではなく、多くを背負う者が勝つのではなく、強い方が勝つ。さらに言えば、勝った方が勝利者となる。勝ったのは、ネオコージェだった。

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2008-08-13

マーシクフおよびグレンデルヒ

| マーシクフおよびグレンデルヒ - 烏兎紀 を含むブックマーク はてなブックマーク - マーシクフおよびグレンデルヒ - 烏兎紀 マーシクフおよびグレンデルヒ - 烏兎紀 のブックマークコメント

 理獣マーシクフは理性を使った。結果、マーシクフは自らを殺した。

「ふは」

 グレンデルヒが、その賢き獣の死骸を見下ろす。

「ふはは。は」

「なんで笑う」

 ザリスは問う。グレンデルヒは、知れたことを、と返す。

「知れたことを。愉快だからだ。悟性を極めた獣、理性を極めた獣――その二頭が別々の思考の結果、共に同じ答を選んだ。実に愉快だ」

「さよか」

 ザリスは背を向けて、歩き出した。踵の腱に力の入らないザリスは、全身をゆらゆらと揺らめかせながら歩く。しかしなぜか、絶対に倒れそうにない安定感があった。

「待て。私を無視するのか」

「なにが」

「私から逃げられると思っているのか」

「あたしはここ通りがかっただけや。死にかかってるそいつの話を、最期にちょっとま聞いただけ。そいつが死んで、そしたら今度はあんたが通りがかった。それも、やっぱりそれだけや」

 ザリスは興味なさげに歩を進める。グレンデルヒは、なぜかまた愉快そうに笑う。

「私をこきおろすか、このグレンデルヒを! いいだろう、グレンデルヒが万能であることを、心に刻み付けて死ぬがいい!」

「たしかにあんたと勝負したら、勝てんやろうな」

「後悔するのだな!」

「けどあんたがどうやって死ぬかは、分かるわ」

 その時グレンデルヒの胸を、燃える鳥が貫いた。

「ば」

「あんたは自分の強さを自分がグレンデルヒであることに求めた」

「か」

「そりゃグレンデルヒは強いわな。でもグレンデルヒには過去がある。敗北の記憶がある」

「な」

「あんたは私らの戦いとは無関係なところで、グレンデルヒの物語の中で死んだ」

「 」

「……」

 胸に大きな穴を空けたグレンデルヒは、やがて俯けに倒れて、死んだ。

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2008-08-12

やみのもり×シバラハシア

| やみのもり×シバラハシア - 烏兎紀 を含むブックマーク はてなブックマーク - やみのもり×シバラハシア - 烏兎紀 やみのもり×シバラハシア - 烏兎紀 のブックマークコメント

倒しても、倒しても。

倒しても倒しても、倒しても倒しても。

「出てこい!」

 現れない。眠り姫は、どこだ。

 森の中は、死体で埋まっていた。現れる人影を、シバラハシアは片端から十字架で殴り殺していった。いや、殺しているわけではない。こいつらははじめから、死体だ。ただの、動く死体に過ぎない。

「出てこい! どこだ! どこにいる!」

 死体を操っているのは、この森の深奥に住まう姫だ。この森に住まうその他の全ての人間は、哲学的ゾンビに過ぎない。数百年前の伝説にはかくある。かつて森の孤城が疫病に蝕まれ、王と召使いたちは幼い姫のために命を捧げた。彼らの生命は森を覆う魔力となり、森の死者は考える死体として動き始めた。以来、姫は絶えることのない使者たちに守られて生きている。

「現れろ死に損ない! お前を殺しに来た!」

 その姫が、獣だった。だからシバラハシアは獣を狙う。森にひしめく老若男女を、倒して殺して潰し続ける。

「そんなん言われて出てくるわけないやない。ばかね」

 傍らで、小さな娘が笑った。

「……ッお、まえかッ!」

 十字架を、ひときわ大きく振るう。娘の顔が潰れて吹き飛び、身なりのよい服を纏った身体だけが残る。

「その子とちゃうよ」

 また反対の方向で、妙齢の女が呟く。一転して質素な身なりの、清貧を表したような女。子供っぽい言葉遣いが、その姿にそぐわない。

「こッの……!」

 同じく、叩き潰す。頭から縦に、釘を打ち付けるように。

「だからあ、ちがうてー」

 もう見ない。ただ声の方向に十字架を叩き付ける。

「やめてほしいな。クオリアがないいうだけで……おなじ人間やのに、ひどいわ」

 今度は、小さな男の子の声だ。迷わず、潰す。

「なら現れろ! 仲間を潰されるのが見たくないなら、こそこそせずにお前が出てこい!」

「ゆうてもな……無理やねん」

「なんだと!」

「あたし、もう死んでるよ」

「な……に……?」

 シバラハシアは初めて十字架を振るう手を止める。

「だって、この森が死びとの森になったんて、もう四百年も前やで?」

「馬鹿な……ならばこのゾンビどもは何だ? お前が生きているから、このゾンビどもも動いているのではないのか?」

「あのな、この森の人らが動けるんは、あたしの魔力やない。死びとがものを考えて動きまわれる、そういうを場所をあたしのおとうさんとか召しつかいさんたちが命をかけて遺してくれたっていう、それだけのことやねんで?」

「じゃあ、お前は何なのだ。今そうして喋っているお前は!」

「だからあ、」

 今喋っているのは……声と違和感のない若い娘だ。この森の眠り姫も、やはりこんな姿をしていたのではないかとシバラハシアは思う。

「私はしばらくこの森で死びとのみんなといっしょに暮らして、そんでふつうに年とって寿命で死んだ。でもな、この森は死びとがものを考えて動きまわれる森やねん。魔力を持ってるのは森じたいやから、私が死んでも関係あらへん。私は死んでからも、この森の中で考えて動きまわってる」

「つまり……」

 シバラハシアは十字架を降ろす。十字架を降ろし、森を見上げる。

「つまり……この森は、そういうシステムになったということか。主人の……作った者の意図を離れて、自律して動くシステムに」

「そうやね」

 シバラハシアは、溜息をつく。

「邪魔したな」

 十字架を肩に担ぎ、踵を返す。

「帰るん?」

「ああ。お前は勝てない相手だ」

「すんでる人みんな動けなくして、この森じたいを焼きはらうとかしたら、システムじたいを殺せるかもしれへんで?」

「時間の無駄だ。それに、死者に用はない」

「そおか。あたしもそうしてくれたら文句ないわあ」

 シバラハシアはもと来た道を引き返す。もうこの森に未練はないようで、自分の叩き潰した死体たちをずんずん踏み越えていく。その背中に、娘は呼び止めるような声をかけた。

「また来る?」

 シバラハシアは振り返る。

「お前は、私に出てって欲しいのか欲しくないのか、どっちだ」

「暴れてはほしくないけど、遊びにくるんやったらええよ」

 シバラハシアは頭を振り、また溜息をつく。

「そのうちな」

 それきり、シバラハシアは二度と振り返らず去っていく。

 "そのうち"は、二度と来ない。

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2008-08-11

ヨ・カネットネーブvs小ヤミー

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さわざわと、影が蠢いている。

白い影と、黒い影だ。

影は無数にある。

一方はヤミーの群であり――もう一方は【G】の群だ。

世にも恐ろしい群れと群れが、ぶつかり入り乱れている。

互いが互いを、貪っている。

すぐに死体の山が築かれるが……群れの数はそれよりも圧倒的に多い。

両群が互いを貪り尽くすまで、三日三晩を要とした。

やがて最後の一匹と一匹が喰らい合い、『G』が勝った。

ヤミーは全て息絶え、【G】がただ一匹生き残った。

勝敗は決したのだ。


 ……ぶちり、と、【G】の最後の一匹が踏み潰された。


「うまく共倒れたな」

 グレンデルヒ・ライニンサルの名を持つ美少女が、【G】の死骸を見下ろす。

「いかな獣も恐るに足りん……だがお前にだけは分が悪かった」

 グレンデルヒは静かに語る。

「なぜならお前は【G】だからだ。私と同じな。言霊を同じくするお前を相手にしたときだけ、私の完全性は揺らぐ。だから、お前との勝負だけは避けさせてもらった」

 グレンデルヒは……笑う。完全な笑みが広がる。

「お前が消えた今、私は真に完全な獣だ。さあ……早く私を勝たせに来い」

 高笑いが、響くものもなく荒野に吸い込まれていく。ヤミーと【G】の無数の死骸を後にして、グレンデルヒは栄光の舞台へと向かった。

ネオコージェ・カッサリオ

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 父、カッサリオを超える。ネオコージェ・カッサリオはそれだけを考えていた。いつか父と対峙できる時を、千秋の思いで待ち望んでいた。しかし、その時はやって来なかった。

「ちがう」

 ネオコージェは、遂にカッサリオと対峙した。そのはずだった。しかしネオコージェは、そのことを認めなかった。

「自分はおとんちがう。誰や」

「何を言っている。私はカッサリオだ」

 違う。父と子の魂が、その真実を伝える。では、これは誰だ。カッサリオの姿をしたこの獣は何者だ。

「私はカッサリオだ」

 そう繰り返す獣の瞳に濁りはない。この獣は、自身をカッサリオだと確信している。どういうことか、これは。考えて、理解する。

「おとん、負けたんか」

 負けたのだ、父は。複製する獣カチナシ・ジーノントに、父は負けたのだ。

「私は、カッサリオだ」

 ネオコージェは、哀れに思った。敗れた父が哀れだったし、自身を父と錯覚するジーノントも哀れだった。そして、超えるべき存在を失った空虚がネオコージェを支配した。

「私は……カッサリオだ。ネオコージェよ、私はカッサリオだ」

「わかったて、もうええ」

 ネオコージェは、カッサリオに正対する。哀れみの目は拳で拭う。

「あたし、この日を待っててんで……勝負しようや、おとん」

 獣と獣の、拳が交わる。

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