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ファイアマインドの住み処

水を考えてみよ。単純にして変幻自在、用途は多彩にして生活の細部に入り込み、破壊と恵みと美とをもたらす。お前の言うファンタジーとやらは、これよりも幻想的な光景を描けるのか? ましてや、この世にはこのようなものが何億とあるのだ。

2008-02-01

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「ヒュドラ……」



陽がまだ中天にも届かない頃、人影が丘を上った。

草原は晴れ渡っていた。雲が爆発の残滓のように薄く延びて、空と溶けている。時間はとろとろと流れ、まるで昨日の嵐が嘘のようだった。

「あー、こんなところにいた!」

東からの風を受けて、敷き詰められた緑がさわさわと波打っている。陽の光はやわらかい。

「いつもいつも、どうしてこう遠くに行こうとするかね。別に食べようってんじゃないんだから、おとなしくしてくれりゃあいいのに」

影はふたつあった。ひとりの少女が、ひとつの小さな影を追いかけている。それはニワトリだった。やたらと羽根をばたつかせながら軽やかに跳ねて、野原を駆け回っている。少女はスカートをふわふわと翻して、小走りに駆けている。

 やがて、少女は鳥に追いついた。

「そりゃ! つっかまえた!」

両手でわしづかみにし抱きこむ。鳥はバタバタもがきながら叫び声を上げた。

「ケーッ」

「ケーッじゃないよ。手間かけさせないの」

がっちりと胸に拘束する。ほっ、と少女の口から出た息は白かった。太陽が明るくても、まだまだ寒い時期だ。

「おー、ぬくいぬくい」

羽毛の下からぶるぶるとふるえる体温を感じながら、少女はそのまま帰路につく。鳥の方は逃げようがない状態にありながらも、まったく落ち着きを見せようとしない。少女がひとつ丘を越えたあたりで、鳥は信じられないほどの大声で鳴いた。

「わっ」

それはまさに、いななきであった。遮るものの一切無い草原に、高らかに響き渡る。思わず少女は顔をしかめるが、耳をふさぐには手が足りない。ニワトリは、鳴きまくった。現状に不満があるのか無いのか、何か思うところがあるのか無いのか、なんなのか、とにかく、何度も何度も鳴いた。まるで世界の果てまで届かせようとでもいうかのように。

「はいはい、わかったわかった」

そう言って少女は、胸に抱いた鳥をゆらゆらと揺らす。鳥の声に理解の意を示したのは、彼女が、生物の垣根を越えて言語一般に通じる普遍的な真理を体得していたから、という訳ではない。ただ口からそう出ただけだ。

風が吹いた。少女の髪ははためき、鳥の羽毛が一枚、空に散った。



爆炎に次ぐ爆炎。

それは攻撃ですらなかった。常態である。身の内に神殺規模の莫大な熱量を抱え込んだ怪鳥が、ただ動くだけで発せられている余波である。この星の全景を見渡せる塔の上空で対峙するふたつの存在は、強大な炎の塊に包まれて影も見えない。光や音のみならず、あらゆる波動がその熱波に歪められ、情報としての精度を失っていた。

それを屋上で見守る魔女たちは何も分からずに、簒奪者の敗北を祈るばかりである。ただ一人だけがその両眼を小刻みに動かし、ノイズの中のわずかなシグナルを拾い上げて、炎の向こう側の光景をリアルタイムで再構築している。

「……ボルテージ……」

は意識のすべてを観測に集中している。擬似的な透視によって読み取った、グレンデルヒの言葉が彼女の口からもぼそぼそと漏れた。



「……だと……!?」

グレンデルヒはしかし、我が目を疑わなかった。彼が見たものは、愚直なまでに炎の力に準じることで戦いを勝ち抜いてきた怪鳥の、愚直なまでに愚かな選択だ。また炎。またこの鳥は炎だ。彼がかつて修羅の道を選んだときから始まり、今もなお頭脳の中で処理を続けている無数の想定ケースのなかにその選択は当然含まれ、なおかつ高い優先度でリスクの分析が行われていた。既に知っている。理解の範疇。メクセトが分不相応な力を求めて創出した奇形の武具。くだらない副作用のつきまとう失敗作たち。薄氷の鋭さを刃と成すが如き怪発明。その冗談がもたらす効用の限界も既に見極めている。

姉妹九重奏。ヒュドラボルテージ。メクセトの残した神滅ぼしの武具のひとつ。自身をも焼き焦がしてしまう力を秘めた炎の冠。冠と言っても、これだけは他の武具と違い固定化された形状が無い。その外観を一言で表現すれば火の玉だ。これといった宿り木も必要なく空中で燃え続けている。燃焼に酸素も必要とせず、水をかけても絶えることは無い。その炎は、中心の特異点からこんこんと湧き出ている。メクセトがオルガンローデを召喚するために次元に開けた異界へと通じる風穴が、どうしても縫合しきれずに残ってしまったもの。ほどけなくなった固結びのように閉じることも広げることも出来なくなったこの穴には破壊兵器としての威力は全く期待できない。発見された使用法は、口から呑み込んで体内に取り込むこと。燃焼とは、熱的死への接近速度が観測者から見て急速であることを指す。すなわち、ヒュドラボルテージの服用者には、精神と肉体の熱的加速がもたらされるのだ。擬似的な時間制御。かれは相対的に世界の減速を体感し、同時にその肉体は加速度的に崩壊してゆく。1秒を2秒に引き伸ばすために数ヶ月、3秒に引き伸ばすために数十年の寿命を支払わされる。効果に対してあまりに大きな代償。これがヒュドラボルテージの抱える致命的欠陥だ。

たった十秒程度の継続すらも在り得ない夢。もって数秒。その数秒を何に使うにしても、撃鉄は力のほとんどをそれで使い果たしてしまうことだろう。

――「その数秒を何に使うにしても」。

これが超人グレンデルヒにおける、完璧に死角が無いはずの意識に生じた、わずかな間隙だった。「その数秒を何に使うにしても」。すなわち、宿敵と呼ぶに足る存在と邂逅できたことへの歓喜、他人によるいかなる批判よりも厳しく自らに与えた自戒と共存しながらも自分の能力に対する絶対の自信から否應無しに生じざるを得ない傲慢、戦闘のシミュレーションについての数分先まで見据えた無数のバリエーションの相互の比較評価および選択判断をいかなる瞬間においても無間断で遂行し続けるために割り当てるべき頭脳のリソースを節約する必要性、これらが重なることによって、今現在この瞬間に目の前に横たわっている最重要課題であり、処理時間短縮のために「ヒュドラプロブレム」とリネームしている問題である「撃鉄がヒュドラボルテージを使うことで一体何をやらかそうとしているのか」の推測を、他の処理を優先して実行するためについ数瞬後に遅らせてしまったのだ。

グレンデルヒの左胸が隆起した。硬質の鋭い先端がそこから顔を出す。それは、彼の背後から心臓を破ってここまで貫通した撃鉄のクチバシだった。彼は殺された。一撃で殺されたのだ。簒奪者グレンデルヒ、超人グレンデルヒ、解析の覇者グレンデルヒ=ライニンサルが予測不能の事象により怪鳥撃鉄の一撃の元に死す。あまりに速すぎる出来事であったことと、あまりに彼の世界観において現実離れした出来事であったため、彼はこの瞬間それが現実の光景ではなく自分のシミュレーションの結果のひとつであるか、もしくは未知のスキルか特殊能力による幻術がもたらしたものであるかと錯誤した。

本来なら分析処理アレイの先頭に配置すべきだったヒュドラプロブレムを数瞬後の処理予定となっている3911番目に配置してしまったことを後悔したがもう遅い。アレイを再配置する暇も無い。すでに撃鉄のボルテージタイムは始まっている。あるいは終わっていた。

ボルテージゼロ。撃鉄は翼を二度羽ばたかせて熱風を巻き起こした。これはもうすでに数瞬もはるか昔の出来事。それを今さら追体験している。あまりの速さにグレンデルヒは思考において時系列の混濁を起こしていた。自分も反射的に何か技を放った気がするが分からない。反射的にというのが致命的だ。慣れ親しんだデフォルトの挙動を無批判に採択してしまったということなのだから。何か別の行動に変えるべきであったことは、生物の脳の中で最も早い思考、すなわち直感においては自覚してはいたが、神経伝達が間に合わなかった。もしもそのほぼ自動的とも言える反射行動に割り込みをかけて自分の挙動を変えられたなら、あるいは適切な対処ができていたのかも知れない。

ボルテージワン。さらに撃鉄は翼を羽ばたかせる。その圧倒的な空圧により、自分は既に完全な挙動不能にまで陥っていた。目の前の光景を漫然と認識し続けていた。そのとき彼がやっていたのは、動けずにいる自分やこの無残な状況を呪うことではなく、ボルテージゼロにおいて適切な対応が出来なかった自分の限界についての分析だった。彼はまだ考えている。彼はまだ戦っていた。もしも。もしも、反射行動への割り込みが出来たなら。もしも出来たなら。撃鉄の攻撃を凌ぐことが出来たのではないだろうか。いやそれは出来ない。反射行動においてはインパルスの伝達速度を落とす訳にはいかないから、その挙動はあらかじめ設定した単純な条件によってパターンを切り替えるぐらいしかカスタマイズできず、そのパターンをリアルタイムかつインテリジェントに切り替えることは神経回路の構造上不可能なのである。

彼は意識の端で撃鉄が彼の感覚域からロストしたことを捉えながら、なおも思考を続ける。自分の神経回路の構造には制限がある。だが、その回路の構造を自ら再構成したなら……? 可能か? いや、それはやったことがある。神々の領域をも侵した自分にとっては造作も無いことだった。自らの肉体を細部に到るまで、既に考えられる限りのベストなデザインで最適化を完成していたであったつもりであった。しかし、まだなお成長の余地があるということだ。あと足りないのはその構造に取り込む割り込み機能の具体的な実装方法だ。それを導出するにはかなりの時間がかかるだろう。だが簡単な方法がある。二刀無双・の肉体にそれは備わっているはずだ。だから彼女を殺して解剖して、構造を暴いてしまえばいいのである。さすれば、彼は絶対心眼を手中に入れられる。そうだ。簡単なことだ。この戦いに勝ったら、それをすればいい。

あろうことか彼は、「この戦いに勝ったら、私は」を考えてしまっていた。それを考えたとき、すでに自分が死への下り坂にいることにも気づかずに。

そしてボルテージツー。グレンデルヒの左胸が隆起した。硬質の鋭い先端がそこから顔を出す。それは、彼の背後から心臓を破ってここまで貫通した撃鉄のクチバシだった。彼は殺された。一撃で殺されたのだ。



撃鉄は、ヒュドラボルテージをぺっ、とクチバシから吐き出した。

力を失い落ちていくグレンデルヒの肉体は胸から上と腰から下とに千切れ、真ん中の腹はもう無い。それは撃鉄の全身が通り抜けた跡だ。噴出した血はすぐに蒸発して霧となった。

辺りに広がっていた爆炎も次第に止み始めた。

「たまんねーザマだな、わたしといっしょだ、ははははははっ!」

無い腹を抱えて大笑いしているのはカスミストだった。他の魔女たちも、安堵に胸を撫で下ろしている。しかしそこに水を差すように、が鋭くつぶやいた。

「……まだだ」

魔女達ははっとなって手すりに駆け寄り、見下ろす。グレンデルヒは胸から下を失ってはいたが、その手にはまだ槍がしっかりと握られていた。

「ちっ、死に損ないが」

「奴は死んでいない訳ではない。死活処理系に割り込んで、自らに訪れた死を、その瞬間を引き伸ばしている」

は唾棄するように言った。「死に損ない」という言葉から自分自身を連想してしまったことが、少し不快だった。

「……なんて」

魔女の一人が驚愕に目を見開き、わなわなと唇をふるわせた。

「なんて……不合理、な……。これも、紀元槍の<<力>>だというの……!?」

「いや、あれは沙羅双樹だ」

は冷静に応えた。

グレンデルヒはさかさまに落ちている。傲慢にもこちら側上空を「見下ろし」つつ、その口には薄い笑みを浮かべている。

「優勝おめでとう、撃鉄君」

簒奪者の落下は減速し、一地点でぴたりと止まった。そして、向きを変えてゆっくりと浮かび上がってくる。

「私はもう死ぬ。死ねばこれまでの槍の所持者たちと同様に、私もまた紀元化することになるだろう。有象無象の者たちとの意識合一などというものが理想郷だとは私には到底思えないが、取り込まれた意識世界の内部においても私は強靭な意志で個を保ちつつ、比類なき知恵と力で他のすべてをねじ伏せることが可能であろうから、死も死後も別段問題視はしていない。だが、その前に槍の所持者としての最後の役割は果たしておく。槍の継承だ」

撃鉄はケーッと高らかに鳴いた。その意味するところは誰にも分からない。……一人を除いて。

「仕様1。紀元槍は決して破壊されることがない」

グレンデルヒは崩れゆく肉体を限界の地点で維持したまま、語る。その目にはすでに生気が無い。もしかしたら彼の頭脳と肉体は紀元槍が自らを次の所持者に渡すために利用し延命させているだけで、そのクオリアは既に消失しているのかも知れなかった。

「仕様2。紀元槍を手にした者は、そのすべての力を失い、レベルを1に戻して新たな世界を彷徨わなければならない」

「仕様3。紀元槍はひとつだけ可能とする。何を、ではない。すべてをだ。ただし、仕様1と仕様2に反しないことが前提となる」

「仕様2で言った新たな世界の構造や内容に、希望を反映することもできる。きみが、いつだったかに夢見た……あのささやかな願いを現実のものにすることも、もちろん可能だ。レベル1なら丁度いいんじゃないか? ……望めば何でも叶うんだよ。もっとも、万能力の罠には注意されたい。たとえどんな者でれ、自分自身の真の望みを制御できないところに回避しがたい落とし穴があるからな」

「これですべてだ。必要なことは説明した。あとは、きみの好きにするがいい……新たな簒奪者よ」

グレンデルヒ撃鉄に向けて、紀元槍を放ってよこした。そして今度こそ正式に死を迎えて死体となり、糸が切れたように空を落ちていった。



世界の最深部と連結している槍に、撃鉄の体が触れようとしたその時。

「いいかしら」

塔の手すりを越えて浮遊し、撃鉄の燃えさかる羽根を引っ張ったのはかれを導いた魔女だった。

「お疲れさん。よくがんばったわね」

撃鉄は雄たけびを上げた。

「うん。そうね。そりゃそうよね。でも大丈夫よ。あなたは覚えてないかも知れないけど、約束したのよ。わたしが全部やってあげる。……いいわよね?」

撃鉄は力いっぱい絶叫した。

「ふふ。ありがと。……さて、始めますか」

魔女が腕をまくりながら、その槍に手を伸ばそうとした。

「オイちょっと待てよ!」

そこに割り込みをかけたのはカスミストだった。

「なんでティリシアが槍をゲットする流れになってるんだよおかしいだろ。どさくさで何しようとしてんだよ!」

撃鉄は雄たけびを上げた。

「うるせえよ!」

「カスミちゃん。わたしはかれと約束したのよ。難しいことはわたしが引き受けてあげるって」

「そんな口約束でホイホイ貸し借りしていいもんじゃないだろその棒は。だいたいなんだよ今のやりとりはよ。どう考えても、グレンデルヒの糞クドい説明なんかカケラも理解しちゃいないその鳥の無知につけこんで、無意味な鳴き声と適当に意思疎通してるフリしてまんまと槍を略」

カスミストの言葉が唐突に止まった。顔の下半分から首にかけてが消滅し、言葉を発せられなくなったのだ。「略」で切れたのは、こうなるのを予期して発言を略す意を示したのか、それとも「略取」とでも言おうとしたのか。それでも彼女は何らかの主張をすることはやめようとせず、塔の手すりをばんばん叩いた。

カスミスト、落ち着きなさい。我々は迂闊なことはできないんです。グレンデルヒの道楽大会のルールを遵守する必要が無いのは元より、我々が元々画策していた、優勝者の善性に期待して槍の新たな守護者となってもらうプランはもはや効果があるとは言えません。撃鉄は無邪気な鳥ですが、彼はものの判断を十分にできない可能性があります。そして彼は炎の鳥です。彼に槍を渡してしまったら、もしかしたら、たとえば世界全体が炎上してしまうかも知れない」

「……」

ヘリステラに取りなされ、カスミストは引き下がった。ヘリステラはティリシアの方に向き直る。

「ティリシア、あなたは信頼できる子です。撃鉄に槍を渡さないことについては賛成です。優勝商品および世界救済の恩赦として、彼の望むものを我々が代わりに差し上げればいいだけの話でしょう。しかし、紀元槍を手にしていったいどうするつもりですか?」

撃鉄の導き手たる魔女、ティリシアは答えた。

「この、紀元槍の機能がもたらしている世界を巻き込んだ修羅地獄に、終止符を打ちます」

「それは我らの長年の悲願ですね。それができればベストです。しかし、先ほどのグレンデルヒによる説明でも触れられましたが、紀元槍は破壊することも消滅させることもできません。また、仮にそれが可能になったら、それは世界の破滅と同義でもあります。なおかつ、紀元槍はただ存在するだけでその力に惹かれた修羅を呼び込み続けるでしょう。それにも関わらず、あなたはベストの解を示すことができると?」

「はい、ヘリステラ。わたしの考えではそれは容易です。この世界の根幹の制御系の動力源であり、紀元槍にてドライブすることで紀元槍の破壊以外のすべてを可能とする紀元力。これを使って、新世界における紀元力そのものに制限を与えます」

「制限ですか。それはどのようなものでしょうか」

「メタスキル・ザ・ワールドの維持が解除されず、なおかつ仕様の1と2に影響が発生しない範囲内で、紀元力を極限まで縮小します。そうすれば、これまでは破格であった<<紀>>の力は他の五属性と同格にまで落とし込まれ、それに伴って紀元槍は弱体化し、メクセトの武具と一緒にフラベウファの金鎖で封印することが可能となります」

「ふむ。……なるほど。確かにその状態であれば、我らの完全な管理下に置くことができる。理には適っていますね。しかしそれが可能として、ティリシア、紀元槍を使用するあなたのレベルが1に戻るという損失が残ってしまいますね。あなたである必要があるのですか?」

ヘリステラのこの質問に、ティリシアはばつが悪そうに笑いながら頭を掻いた。

「いやあ……この土壇場にみなさんの前でカミングアウトってのもしんどいんですけど……わたし、レベル1なんです。だから、関係ないです」

「そうでしたか。まあ、いいでしょう。やってごらんなさい。何かあったら、わたしたちが全力で事態を収拾します」

「ありがとうございます」

ティリシアは礼を言った後、紀元槍に手を伸ばし、掴んだ。



こうして世界の七難題のひとつである紀元槍問題はひとまずの解決を見、<<紀>>や火水風地剣の五属性を含む世界の法則は魔女たちによって勝手に更新され、撃鉄は彼自身の希望により世界の定刻を告げる者となり、彼は星見の塔の頂で何度も何度もいななき続けたのだった。

おわり